ITmedia NEWS > STUDIO >
コラム
» 2020年06月18日 19時05分 公開

プロ御用達のアドビが“初心者”向けアプリ「Photoshop Camera」を作った理由

アドビの「Photoshop Camera」は、初心者でも「映える」写真が簡単に作れるカメラアプリ。しかし単なるエンターテインメントではなく、クリエイターとユーザーをつなぎ、アドビのツールを用いた映像制作の世界に誘う役割を持っている。

[本田雅一,ITmedia]

 アドビ(アドビ システムズから改称)が6月11日に配信を開始したスマートフォン向けカメラアプリ「Photoshop Camera」。写真編集の初心者でも「映える」写真が簡単に作れるエンターテインメントアプリと思うかもしれないが、よく見ていくとクリエイターとユーザーをつなぎ、アドビのツールを用いた映像制作の世界に誘う役割を持っていることが分かった。

SNSなどで目立つ写真が簡単に作れる「Photoshop Camera」。無料で使える

 Photoshop Cameraには、アドビが開発したAI「Adobe Sensei」(機械学習による自動・省力機能)の成果が組み込まれ、被写体を認識して背景から自動的に切り抜いたり(Photoshopでいうところのオブジェクト選択)、より効果的でドラスチックな画像補正機能を誰でも活用できる。

 そして「レンズ」。Photoshopあるいは動画加工ソフト「After Effects」で使える視覚効果やレタッチの手順をパッケージ化したものだ。ユーザーは目的別に用意されたレンズを選ぶだけで、複雑な処理を伴う画像エフェクトをいとも簡単に再現できる。

 例えば風景写真の空全体を別の映像に置き換えたり、アニメーションとして元絵に対して視覚効果を加えるといったことは、プロがPhotoshopやAfter Effectsを使えば簡単にできる。Photoshop Cameraは、それぞれのソフトが持つ映像処理アルゴリズムに加え、プロが作業するときの手順やパラメーターまでを集め、レンズという形にまとめた。プロ向けのツールとプロの手順を自動化したのだから、完成度の高い画像や動画が作成できるのも当然だ。

印象的な写真がスマホだけで作れる

 人物写真で被写体のバックをボカすといった機能は、スマートフォン側に搭載されている場合もあり、例えばiPhoneでは「ポートレイト」モードで撮影した写真に深度情報も付与する。しかしアドビによるとスマートフォン側の付加する深度、背景マスクなどは一切使わないという。アプリストアにあふれている遊び用のカメラアプリとは一線を画す部分だ。

クリエイターを知るきっかけに

 レンズには今後、クリエイターの名前を冠したものも登場するという。加工した写真を見てユーザーに「すごい」と思わせるだけではなく、そんな写真や映像を作った人達がいることをさりげなく伝える。クリエイターが意思を持って写真や動画を加工していると間接的に知らせることに意味があるのだと思う。

 アドビはカスタムのレンズを開発するツールをクリエイターたちに提供している。筆者もPhotoshop Cameraのクリエイター登録を申し込んでみたところ(現時点では未承認)、レンズはPhotoshopおよびAfter Effectsが持つ機能を用いて開発することが分かった。

レンズライブラリから好みのレンズをダウンロード、追加できる

 レンズの開発に複雑なプログラムの知識はいらない。アドビのツールを使いこなしているクリエイターなら、既にある知識とスキル、手持ちの機材を生かして新しい表現を生み出せる。今のところ登録クリエイターになるには一定の選考基準があるようだが、アドビは徐々に窓口を広げていく考えだ。

 ユーザーから見ればアーティスティックな写真やドラマチックな動画を作れる楽しいカメラアプリでも、技術やプラットフォームを提供するアドビの視点で見れば、クリエイターと一般ユーザーをつなぐ架け橋。いずれは本格的に写真や動画の制作に取り組みたいと考えるユーザーが現れ、クリエイターへの道に踏み出すかもしれない。Photoshop Cameraは、そんな未来像も描けるカメラアプリだった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.