東北地方を応援する萌えキャラの運営会社が、キャラの声を生かしたAI研究向け学習データを無料で公開している。直接的な収益にもならず、研究者に使ってもらえるとも限らないのに、なぜそのような取り組みを行っているのか。データを公開した萌えキャラ運営会社SSS(仙台市)の小田恭央CEOに話を聞いた。
SSSは東北応援キャラ「東北ずん子」を運営する企業で、グッズの製作や地域振興イベントなど、ライセンスビジネスを展開している。ヤマハの歌声合成ソフト「VOCALOID」用音源の販売などは行っているが、AIの技術開発を行っているテクノロジー企業というわけではない。「AI向けの学習データを無料公開」といわれると少し唐突にも聞こえる。
同社は2019年11月、研究者向けに「東北きりたん歌唱データベース(DB)」を無料公開した。東北ずん子の関連キャラ「東北きりたん」の歌声を約1時間分収録した音声データと、機械学習などに使うデータをまとめたファイルセットだ。
歌唱DBは、AIによる歌声の分析や合成の研究などに使用できる。声をあてているのは声優の茜屋日海夏さん。歌唱DBの制作には1年以上を掛けたというが、さらに同社は第2弾として別の関連キャラ「東北イタコ」の歌唱DBと、口の動きと音声データをセットにした“読唇術DB”など、新たなDBも無料で公開しようとしている。
SSSがこの歌唱DBを研究やAI開発に使うわけではない。企業による商用利用も基本的には認めていない。
自社の収益には直接つながらないにもかかわらず、なぜ無料でデータを公開するのか。その背景には「AIの研究を促進する」以外に「腐らないコンテンツを作りたい」「女の子の声になりたい」など、さまざまな理由があった。
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