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コラム
» 2020年07月16日 11時54分 公開

AIが作ったビールで“優勝”してみた 意外とおいしい?

AIが作ったビールを試飲。味をレビューしてみた。

[吉川大貴,ITmedia]

 7月15日、NECとコエドブルワリーが「AIが作ったクラフトビール」を発表した。AIが雑誌の文章や画像をもとに風味を決めたお酒という。編集長に「ビール好きでしょ? 取材したら?」と言われたので取材したら、なんと試供品をいただけた。せっかくなので、このビールで晩酌してみる。

 余談だが、“優勝”とはアルコールやジュースを飲んで良い気分になることを示すスラングだ。今回は実際にビールを4本飲んで優勝しながら記事を書いているため、後半になるにつれ酩酊度が上がっていくかもしれないが、本稿ではそれも情報の一つとして楽しんでほしい。

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 ラインアップは「人生醸造craft 〜20's PINK〜」(発泡酒)、「〜30's BLUE〜」(発泡酒)、「〜40's YELLOW〜」(ビール)、「〜50's RED〜」(発泡酒)の4種類。それぞれが20〜50代の各世代をテーマに、AIに異なるデータを学習させて風味を決めたという。

 AIの学習データには「DIME」や「女性セブン」など、小学館が過去40年に発行した15誌4000冊のデジタルデータを利用。文章や画像をNEC製のAI「NEC the WISE」に学習させ、各世代を象徴する傾向を「味・香り・色」に反映。ビール職人が再現した。

〜20's PINK〜

 まずは20代をテーマにした〜20's PINK〜から。アルコール度数3.5%のハーブエールで、IBU(International Bitterness Units、ビールの苦さを示す単位)は10。取材の際にもらった資料によれば「アメリカ産ホップのかんきつ系のアロマ、ハイビスカスによる酸味」と控えめな苦みが特徴という。

 まず色については、20代が「現在読んでいる雑誌」のファッションデータから「パステルカラー」がトレンドと分析。香りは、雑誌の中に登場する単語を分析し、「華やか」「フレッシュ」といった頻出ワードを抽出。それぞれビールづくりに反映させたという。

 味の数値化には、雑誌に掲載されているファッションを人が雰囲気や色合いごとに甘味・辛味・酸味・苦味に分類したデータを利用。例えばVネックは辛味、ピンクは甘味といった具合だ。20代が読む雑誌をAIに学習させた味とはどんなものか、実際に飲んでみた。

 口にふくんでみると、南国の花を思わせる、すっきりとした香り。口当たりはさわやかで、舌に乗せた瞬間ほのかな酸味と炭酸の刺激が走る。度数も低いのでごくごく飲めるが、ジュースのような安っぽさはなく、上品で繊細な味だった。今回は常温で飲んだが、冷やしてもおいしく飲めるかもしれない。

〜30's BLUE〜

 次は30代をテーマにした〜30's BLUE〜。アルコール度数は4.0%のフルーツエールで、IBUは20.5。「甘く香るココナッツとホップのトロピカルなアロマ」が特徴で、レモンピール由来の酸味とホップの苦味が楽しめるという。

 色合いは、現在30代の人が20代のころに流行したデニムなどの青色を反映したもの。香りは、30代の人たちが読む雑誌内によく登場していた「エレガント」「ゴージャス」などの単語を、フルーティな香りとして表現した。味は、パンツスタイルの流行を分析した結果から、苦みや辛みを強くしたという。

 缶を開けただけで分かる強いホップの香り。口当たりはやわらかいが、舌に乗った瞬間苦味がガツンと来る。後味はやや辛く、飲み込んだ後は口の中に渋みが残る。単体で飲むより、食事と合わせたほうがおいしく飲めそうだ。

 ただ、色がかなり青いので、グラスに注ぐと少しギョッとする。

〜40's YELLOW〜

 続いては40代をテーマにした〜40's YELLOW〜。アルコール度数5.5%のクリスタルヴァイツェンで、IBUは12。「バナナを思わせるエステルとフェノールが織りなす複雑なアロマのバランスの良いまとまり」が特徴という。

 色合いには、今の40代が20代のころ(1991年〜2000年)に発行された雑誌のファッション画像から「アースカラー」がトレンドと分析。香りはこの世代が30代の頃(01年〜10年)に発行された雑誌の頻出ワードのイメージを反映させた。味は、40代が現在読んでいる雑誌のファッショントレンド(スカートやパステルカラーの流行)を表現している。

 実際に飲んでみると、香辛料のようにツンとした香り。甘めだがのどごしが良く、スーパーなどに売られている缶ビールに近い味。後味もしつこくないためどんどん飲める。バナナの風味が強いが、苦みや辛味は少ないため、4種類の中では一番飲みやすい味だと感じた。AIが「アミノ酸」「メラニン」などの化学的な単語を学習したため、アルコールの強い刺激的な香りになったという。

〜50's RED〜

 最後は50代をテーマにした〜50's RED〜。アルコール度数7.0%のオリジナルエールで、IBUは25.8。「適度なボディー感とすっきりとした飲み口、芳醇な後味」を楽しめるというが……。

 グラスに注ぐと、麦の濃厚な香りが漂う。酸味と苦味が強く、後味はほんのり甘い。ややアルコールがきついため、少しずつゆっくり味わうのに向いている。色や風味の表現手順は20〜40代と同じだが、バブル期を味わった50代のビールは一味も二味も違う印象を受ける。

 飲み口はすっきりしているが、風味は濃厚そのもので、まさに大人の味。強い麦の香りは、AIが「ビタミン」「野菜」などの健康を意識した単語を多く学習した結果生まれたそうだ。

おまけ(おつまみ編)

 コエドブルワリーの朝霧重治CEOによれば、〜20's PINK〜にはシャンパンに合わせるような前菜系のおつまみが、〜30's BLUE〜には魚料理が合うという。〜40's YELLOW〜には白身の魚や肉料理、〜50's RED〜にはしっかりとした肉料理がマッチすると聞いたので、今回はおつまみにアクアパッツァと玉ねぎのマリネを作ってみた。

 朝霧CEOの言う通り、ビールも箸も止まらなくなったので、実際に作る際には要注意。今回のビールは、ECサイト「コエドブルワリーオンラインショップ」から購入できる。価格は1400円(税別)。

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