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» 2020年07月20日 15時42分 公開

地方の再生は災害対策シミュレーションから? 大林宣彦監督の“尾道三部作”で、ITを使った街の再生を考える (1/3)

大林作品のみならず、映画やアニメのロケ地として知られる尾道。しかし、その現状はバラ色ではない。

[Masataka Koduka,ITmedia]

 映画『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の舞台として知られる広島県尾道市。4月に死去した大林宣彦監督作品の聖地だが、近年は観光客の減少が続いている。これを食い止める方法はないのか? いや、あるかもしれない。

 地方の再生を考える上で行政の現場に話を聞いたところ、ITに期待されている実情が見えてきた。聞いた話をもとに、災害対策のシミュレーションまでやってみた。


逝去した大林宣彦監督「尾道三部作」で有名、だが廃れつつある街、尾道

photo 『さびしんぼう』の街、尾道商店街。週末の19時であるにもかかわらず、大半の店のシャッターが閉まっている。19年7月、筆写撮影

 2020年4月、映画監督大林宣彦さんが逝去したと報じられた。大林組映画といえば、「尾道三部作」と呼ばれる映画、『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』が有名。これらの映画に描かれるように尾道は海と山が接近する坂道の街であり、そのパノラマ感覚と、細い街路が織りなす迷路感覚が観光客を引きつける。だが、近年は豪雨や猛暑の影響で観光客数は減りつつあるという。そこにコロナ禍が追い打ちをかけている。

photo パノラマ感あふれる尾道のRhinoceros 3Dモデル。地図から3Dモデルを作成できるサービス、Cadmapprから筆者がダウンロード購入(600円)したもの。

 また、住民の高齢化と都市の空洞化が進み、山手地区では空き家が増加し、廃墟化が進む家屋もある。かつて尾道三部作で主人公たちが自転車で駆け抜けた尾道商店街でも、日中であるにもかかわらず、シャッターが閉まったままの店舗が多く見受けられる。

尾道再生のため立ち上がる数々のプロジェクト

 こうした厳しい現実を打開するため、尾道ではさまざまなプロジェクトが活動を繰り広げている。一部を紹介すると、例えば、NPO法人・尾道空き家再生プロジェクトは、廃墟化しつつある物件をネットで紹介し、空き家再生のためのイベント協力や出資を募っている。

photo 尾道空き家再生プロジェクトにおける再生物件紹介ページ。インスタ映えする美しき “ガウディハウス”もリストに入っている

 また昨年(19年)には、尾道市の情報発信を目的としたWebサイトを立ち上げるためのクラウドファンディングを実施した個人も現われた。他には、尾道を舞台としたアニメ『ソラとウミのアイダ』『蒼穹のファフナー』など、大林映画の聖地巡礼者とは別世代の観光客をターゲットにしたアニメとのタイアップも、街再生のための試みの例と言えよう。

photo 千光寺公園頂上売店の店頭に貼られた『蒼穹のファフナー』のポスター。19年7月、筆写撮影

 さて、日本における街の再生について、全国に視点を向けると、「まちづクリエイティブ」の活動が注目できる。「つづく世界をつくる」「地域力を高めるエリアブランディングと再開発」をテーマとして掲げる代表の寺井元一氏は、過去「ホリエモンチャンネル」で堀江貴文氏と対談を行っている。

 この対談の中で、街の再開発においてIT系人材が求められていること、実際にIT系人材が集まりつつある街、徳島県神山町が紹介されている。徳島県神山町は人口減少が続いて限界集落となりつつあったが、光ファイバー料金の安さからIT系人材が移住し、10年以内にさまざまなベンチャー企業が誕生した。日本におけるITによる地域再開発の成功例の1つだ。

街の再生にITが貢献できることは?

 さて、こういったさまざまな情報戦略が行われているにもかかわらず、豪雨や猛暑の影響で尾道の観光客数が減少傾向にあるのは事実である。街の再生にITが貢献できることは、何か?

 神戸市市役所都市局に勤務する有働氏(仮名)に、地域行政におけるITの活用手法について話を聞いた。有働氏は、95年の阪神・淡路大震災で最大の被害を受けた東灘区の復旧・復興に、当局として携わった。17年に危機管理室に着任してからは、風水害時の災害警戒本部運営のほか、特定外来生物ヒアリ対策、新型コロナウイルスに対しては病床確保などの初期対応を実際に担当してきた人物だ。

有働氏 今、日本では記録的な猛暑が続いていますので、異常高温対策のためのイベントを開催し、熱電素子を利用して座面を冷却するベンチを試作する、赤外線カメラで撮影した屋外熱環境の変化をインターネットで発信するための実証実験などに取り組んでいます。

 豪雨対策としては、地上に降った雨水を、直接放流することなく一時的に貯めて、ゆっくりと地中に浸透させる構造を持った植栽空間の設計などにも取り組んでいます。

 街の再生のためにITを活用した地域ブランディングによって観光客を増やすことももちろん、とても大切です。ですが、私たちは災害大国の日本に住んでいますので、水害や猛暑対策などにITを活用できないかと考えています。まずは、多くの人が住みたいと思う地域社会を作ることが大事ですから。


 災害対策のために行政がITに期待することは多いのだ。さて、豪雨と猛暑が尾道の観光客数減少の要因であるとしたならば、その豪雨と猛暑の問題解決にITは貢献できないものだろうか?

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