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地方の再生は災害対策シミュレーションから? 大林宣彦監督の“尾道三部作”で、ITを使った街の再生を考える(2/3 ページ)

» 2020年07月20日 15時42分 公開
[Masataka KodukaITmedia]

豪雨をGrasshopperでシミュレートする

 さて、先日紹介した建築、土木、ジュエリー、服飾デザインで注目されているビジュアルプログラミングツール「Rhinoceros」のプラグイン「Grasshopper」は、このような豪雨と猛暑の問題解決にも利用できる。その開発/試験、そして実用が現在、欧米を中心に進んでいる。

 例えば、以下の図は、先に紹介したCadmapprにて筆者が600円で購入したCADデータ(Rhinoceros 3Dモデル)を、Grasshopperのコミュニティサイトでメンバーが公開しているプログラム「Drainage Direction Script」で解析したものである。

 Drainage Direction Scriptは、尾道の地形(3Dモデル)データから分かる土地の高低差を利用して、雨が降った場合に水が流れる方向を計算、描画する。赤い線が流水の方向を示している。

photo Drainage Directon Scriptのうち、02DrainageScript.ghを利用して筆者が解析した尾道における流水図。作業時間10分程度でこういった解析が可能。プログラムはVisual Basicで書かれており、解析精度を向上させるカスタマイズ開発もできる

 もちろん、現実の街の排水構造は計算に含めていない単純な地理条件による解析結果である。かつ600円で購入したCADデータなのでその地理情報の精度がどれほどのものか、という制約はあるだろう。しかし、例えば尾道商店街では、公衆トイレが設置された尾道商業会議所記念館広場と“カラオケどれみ”の中間あたり、現在空き地となっており、その前に自動販売機が立ち並ぶ付近(2019年に訪れた際には確認)にて、最も激しい水流が発生するという結果が出た。

photo Grasshopperにより最も激しい水流が発生するとシミュレートされた尾道商業会議所記念館広場。19年7月、筆写撮影。この日は雨が降っていた。水流が最も結集する空き地を植栽空間、あるいは市民農園としてデザインしたならば、野菜と市民たちは雨による恩恵を受けるかもしれない

 豪雨対策として他に、Fluid/Flood Analysis- Flooding modelというGrasshopperプログラムもある。これは、豪雨が発生した場合に、地形的に最も水がたまりやすい場所を濃い色彩で描画するプログラムである。これを利用して尾道商店街付近で最も水たまりが起きやすい場所を分析すると、尾道商店街の北、土堂二丁目交差点と吉備津彦神社や宝土寺のある付近に最も水たまりができやすい、という結果にとなった。

photo Fluid/Flood Analysisツールによる水たまりができる場所、筆者による解析。プログラムはPythonで書かれておりカスタマイズ可能

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