それでは本題に入ろう。
セガが構想する「フォグゲーミング」とは一体どんなものなのか。既に各報道で知っている読者もいるだろうし、もしかしたら件の筆者のファミ通連載記事を読んで概要を把握している人もおられるかと思うが、本稿でも改めて解説したいと思う。
それには、まず、大前提として「クラウドゲーミング」について理解する必要があるだろう。
クラウドゲーミングとは、ユーザーから見て、ネットワーク上に存在するサーバ/コンピュータ、すなわちクラウドにて物理的実態のないゲームマシン(仮想ゲーム機)を稼働させ、そこでゲームソフトを動かし、ユーザーにゲーム体験を提供するサービスのことである。
その仕組みを簡単に言い表すとこんな感じの流れになっている。
(1)クラウド上の仮想ゲーム機で、その時点でのゲーム状態を表現した映像や音像を生成し、これらをネットワークを通じてユーザーに配信する
(2)配信されてきた映像/音像に対しユーザーは手持ちのゲームコントローラーを操作。その操作情報はクラウド側に伝送される。
(3)クラウド上の仮想ゲーム機はユーザーによる操作に対して適切にゲーム処理を進め、(1)に戻る
この流れをもう少し細かく図解しつつ、普通の「ゲーム機によるゲームプレイ」と対比させた図版を以下に示す。
なんだかまわりくどいシステムのように思えるこのクラウドゲーミング。一体どのような美点/魅力があって注目を集めているのだろうか。代表的な恩恵としては、以下のような要素が挙げられることが多い。
(a)ユーザーは高性能なゲーム機を買わずに済み、性能がそれほど高くないPC、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で高品位なゲームが楽しめる
(b)ゲームはクラウド側でメンテナンスされているため、ゲームをダウンロードしてインストールしたり、アップデートが不要。常に最新版がプレイ可能である
(c)仮想ゲーム機がクラウド上にあることから、不正プレイ(いわゆるチート行為)を封じ込められる
(d)主にサービス加入型の仕組みなので、定額料金でさまざまなゲームを好きなときに楽しめる
美点/魅力を列記すると、なんだか夢のようなシステムのように思えるが、いいことばかりでもない。ユーザーの目の前にゲーム機の実機があるゲームプラットフォームと比べれば以下のような課題があることが指摘される。
(I)ゲーム機とユーザーがネットワークを介して繋がるため、遅延の問題がつきまとう
(II)高性能コンピュータシステムの設置コスト(設備投資コスト)、加えて電気代やメンテナンス人権費などの運用コストが運営側にのしかかる
遅延問題の主な要因はユーザーとクラウドとの距離にある。遅延を解消するにはサービスエリア内にクラウドを多数設置することでユーザーとクラウドの距離を詰めることが最もシンプルな解決方法だが、それは(II)のコスト問題に大きく影響する。サービス利用者が増えてペイラインを上回らない限り、運営側は運用コストを払い続けるだけの赤字運営となる
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