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ArmのApplication Core、その変遷新連載「Apple Siliconがやってくる」(3/3 ページ)

» 2020年07月29日 14時05分 公開
[大原雄介ITmedia]
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 Arm自身のコアとしては、2012年にCortex-A57/A53が発表された。Cortex-A57はCortex-A15の、Cortex-A53はCortex-A7の、それぞれArmv8-A版といった構図である。ただ2012年はまだ32bitコアの方が優勢だった。というのは、Androidは2015年のAndroid 5.0、iOSも2013年のiOS 7.0が64bit対応版の最初のOSであり、これ以前のバージョンだとCPUだけ64bitにしても仕方がなかったからだ。その意味では、Cortex-A57/A53は、32bitから64bitへの橋渡し的な役割が求められていたともいえる。さて、この2015年からArmは特にハイエンド向けにCortex-A70シリーズを毎年のように投入していく。一連の製品で言えば、Cortex-A73のみちょっと先祖返り(2命令のSuperScalar)しているが、これはCortex-A73がCortex-A12をベースにした製品だったことに起因する。

 そして2017年にArmv8.2-AとDynamIQ、及びこれを実装したCortex-A75/Cortex-A55を発表する。まずArmv8.2-Aとは何か、という話だが、Armはv8世代で少しずつ命令セットを追加している。この話はこちらに書いたので繰り返さないが、Cortex-A75以降のCPUコアは、いずれもArmv8.2-A準拠+部分的にArmv8.3-A〜Armv8.5-Aの命令を取り込んでいる(全部ではない)という、ちょっとややこしいことになっている。

 一方のDynamIQは、例えばこちらでも説明があるが、big.LITTLEの後継(というか、更に柔軟性を増したもの)である。このDynamIQ、big側のコアはCortex-A75以降、LITTLE側のコアはCortex-A55が担うことになる。Cortex-A55はCortex-A53の後継で、命令パイプラインはほぼCortex-A53の延長にあるが、Armv8.2-AやDynamIQに対応している点が異なる。

 もう1つラインとして存在するのが、Cortex-A7の後継である。

 2015年にCortex-A35として投入された最初の製品は、Cortex-A7のArmv8-A対応版である。同じ2015年に、そのCortex-A35と同じ構成ながら32bit対応(つまりAArch32のみサポート)の組み込み向けコアであるCortex-A32がリリースされ、2019年には逆にAArch64のみのサポートとなる64bit専用のCortex-A34も追加されている(これも組み込み向け専用)。

 また、図2には挙がっていないが、2018年にはCortex-A76の派生型であるCortex-A76AE、それとArmとしては初となるSMT(Simultaneous Multi-Threading)対応のCortex-A65AEもリリースされている。このAEというのはAutomotive Enhancedの略で、要するに自動車内の機器向け製品であり、スマートフォン向けではない。同様に2018年にはNeoverseという新しい製品ラインも発表されているが、こちらはサーバ向け製品であり、やはりスマートフォン向けではない。

 これらに続くものとして、2021年以降にMatterhornと呼ばれる新しいコア(big側)が予定されていることは既に明らかになっている。ただこちらはArmv8.6-Aに対応する(=Armv8.5-Aまでの全ての拡張命令も全部サポートする)という以上の情報は今のところ出てきていない。

 そして(Armがbig.LITTLEを全部捨てない限り)Armv8.6-Aに対応するLITTLEコアも必要となるはずだ。これもおそらく同じ時期に投入されるだろう。また、この世代がDynamIQをまだそのまま使うか、拡張した発展型を使うかも今のところ明らかになっていない。このあたりは今年10月にオンラインで開催予定のArm Dev Summit 2020でひょっとすると何か情報が出てくる“かもしれない”。

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