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身に覚えのない170万円の請求が……AWSの運用管理で起きた“4つのしくじり”(4/4 ページ)

» 2020年08月17日 07時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]
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「バーストクレジット」の使い切りに注意

 4つ目のしくじりは、「思わぬリソースの枯渇」。

 アイレットがAWSのファイル共有サービス「Amazon Elastic File System」(EFS)を使ったシステムを構築し、運用を続けていたところ、ある日を境にサービスのパフォーマンスが極端に低下するようになった。サーバやデータベースの稼働状況には何ら問題はなく、なかなか原因を特定できなかったが、最終的に判明したのが「EFSのバーストクレジットの枯渇」という現象だった。

photo 「Amazon Elastic File System」

 EFSは「バーストクレジット」と呼ばれる仕組みを通じて、パフォーマンスを自動的に調整している。これは、システムの利用量があらかじめ定められた閾値(しきい値)を下回ると「クレジット」がたまり、上回った場合は、たまっているクレジットを消費することで性能を一時的に引き上げられる仕組みだ。

 ただし、このバーストクレジットを全て使い切ってしまうと、基本性能以上の性能は出なくなる。そのため、高い負荷が掛かった場合には極端にパフォーマンスが低下する。

 今回構築したシステムでは、このバーストクレジットの監視を行っていなかった。そのため、画像の読み込み時など大容量のデータを扱う際に、基本性能を超過してバーストクレジットを使い切ってしまい、パフォーマンス低下を引き起こしていた。

 「最終的にはバーストクレジットを使わずに、あらかじめパフォーマンスを指定できる『プロビジョンドスループット』というモードに切り替えることで事なきを得た。バーストクレジットの仕組みはEFS以外にも、EC2のCPUやEBSなどにも適用されているため、今後は同じ問題に直面しないよう、あらかじめその動作を把握しておくことが重要だ」(古屋さん)

 高額請求が来たり、予期せぬエラーが出たり、突然止まったり……。便利な印象のあるクラウドだが、その運用は一筋縄ではいかないようだ。だが古屋さんは、これらの失敗の原因を突き詰め、対策を練る中で、新たな知識を得たとしている。

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