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FDM方式の3Dプリンタを1週間使ってみた そして等身大へ3Dプリンタ買っちゃいました(1/3 ページ)

» 2020年08月17日 11時15分 公開
[松尾公也ITmedia]

 前回は、光造形方式(SLA)3Dプリンタ「ELEGOO MARS」に加えて、中国Crealityの「Ender-3 V2」という熱溶解積層方式(FDM)の3Dプリンタを発注したところまで書いた。記事掲載の翌日に届いてから1週間ほど使ってみた。その使用感を報告しておこう。

 SLAとFDMはどちらも薄いレイヤー(層)を少しずつ重ねて立体を造形していくものだ。それを液体(レジン)に紫外線を当てて固体化するのが光造形型、リールに巻かれたフィラメント(釣り糸みたいなの)をノズルで熱して溶かして台の上で固体化するのが熱溶解積層型、という違いがある。双方にメリット、デメリットがあるといわれているのだが、どうせなら両方を体験したいということで、異なる2つの方式の3Dプリンタを手にしたという次第だ。

 ELEGOO MARSは、自分が購入した25日前から4000円値下げされて2万3999円。Ender-3 V2の前モデルである「Ender-3 Pro」はタイムセールで2万5000円台。3Dプリンタの価格破壊は現在も進行中のようである。両方合わせても5万円ちょっとだ。本当に安い。

Ender-3 V2を組み立てる

 まずは届いたプリンタの組み立てである。Ender-3 V2はその他のEnder-3シリーズと同様に、半完成品だ。ある程度の組み立て作業が必要で、早くて2時間、遅くて4時間くらいかかるといわれている。

 8分くらいにまとめたチュートリアルビデオも公式YouTubeチャンネルで出ているので、見てみた。なんとなくできそうだ。

 組み立ての模様はYouTube Liveで公開しながら進めた。実際に組み立てた経験のある人が何人かコメントしてくれていて、そのアドバイスに従いながら作業を進めていったのだが、想定よりはるかに時間がかかって、電源を入れられるようになったのがなんと5時間後。テストプリントを開始できるようになるまでさらに2時間。

 敗因としては、まず、部品(ネジ類)をちゃんと分かる場所にまとめておかなかったことが挙げられる。これは基本中の基本であるのだが、甘く見ていた。いいかげんな準備では不足するくらい組み立ての部品数は多く、ネジの種類も多様だ。多分これで1時間はロスしている。その間、井上陽水「夢の中へ」を歌いながらネジを探し回ることになったのだ。

 もう1つ、チュートリアルビデオが、カメラ視点があちこちに移動していて、左右前後の状態を探るのにやたらと時間がかかる。Z軸の支柱2本の上下左右の判別がマニュアルにちゃんと書かれていないため、向きを間違えて取り付けてしまう。左右と前後。これでさらに1時間くらいのロス。

photo YouTubeのコメントでサポートしてもらいながら組み立て中

 「チュートリアルビデオは再生速度を半分に落として止めながら見るといいよ」というアドバイスをもらって、本体と部品の向きを確認しながら組み立てを進めることで、ようやく完成に持っていけた。後で聞いたら、YouTubeに上がっている動画はちょっと違っていて、USBメモリに入っている動画が正しいものらしい。なんだそれ……。

 組み上がって電源を入れられる状態になっても、それで終わりではない。

 レベリングという作業が必要になる。ノズルの先と、印刷台となるプラットフォーム(220×220mm)の隙間がコピー用紙1枚ギリギリくらいになるまで4箇所のダイヤルを回して水平になるよう調整する工程だ。光造形のELEGOO MARSではプレートに押し付けてネジを2箇所固定するだけの簡単な作業だったが、こちらはかなり慎重に行う必要がある。ここをおろそかにしたままプリントを開始すると、プレートやノズルを傷つけてしまう可能性が高い(自分がそうだった)ので、気をつけよう。

photo ELEGOO MARSのサンプルデータであるチェスの駒をEnder-3 V2でも出力してみた(白い方)

 組み立てが必要な点も含めて、印刷を開始できるようになるまでのプロセスはEnder-3 V2よりもELEGOO MARSの方がはるかに楽だった。光造形の方はその分、印刷された後の処理がちょっと大変なのだが。

 この苦労を考えると、ほぼ組み上がった状態で配送されるcheero3D Proのありがたみが分かる。ブログ「ネタフル」のコグレマサトさんは、Ender-3 Proの同等機であるcheero3D Proを最近購入し、めでたく3Dプリンタ仲間となった。同等の半完成品より1万数千円高いが、それでも4万4800円(税込)で買える。これもまた正しい選択だろう。

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