SLAとFDMを同時に使い始めてまず感じたのは、FDMは「見てて楽しい」というところだ。ELEGOO MARSの場合、造形物がくっつくビルドプラットフォームがレジンタンクにいったん浸されて、ピーという音を出しながら紫外線を照射されると引き上げる。その繰り返しで、印刷の最後の方にならないと、出来上がった造形物を拝むことができない。
一方、FDMだと、ノズルとプラットフォームが前後左右に動きまくって徐々に出来上がっていく様を観察できて、大きな建造物の建築をタイムラプスで眺めているかのよう。
Ender-3はプレートも動いてしまうので、固定カメラでタイムラプスを撮るのは難しいのだが、これを実現してくれる、「Octolapse」というサードパーティープログラムがある。撮影の邪魔にならないノズルとプレートの位置を決めておいて、各レイヤーの印刷が終わるとそこに戻ってカメラのシャッターを切る。それを繰り返してタイムラプスにしてしまう、ある意味強引なプログラムだ。
上位機種のEnder 5ではプレートが固定されるので、こういったプログラムを使わなくてもタイムラプス撮影できるので、そういうチョイスもありだろう。
前回、「出来上がったモデルデータを分割して大きく出力し、それらを組み合わせたい」という願望があることを書いた。そのためにFusion 360でブーリアン演算による人体モデル分割を勉強しようとしていたのだが、その必要もないことが分かった。
ここで、友人のドリキンがダウンロードしたSTLファイルを分割して角度を変えて接合するということをやって見せてくれているのだが、そのツールは、Fusion 360などではなく、「3D Builder」という、MicrosoftのWindows用ソフトなのだ。
この無料ソフトが3Dオブジェクトを読み込んで大きさを変えたり3Dプリントサービスに注文できるのは知っていたが、オブジェクト分割の機能まで持っていたとは。Microsoftは偉大だ。Paintソフトを3Dにしちゃったときには迷走してるなと感じたのだが、地味にすごい機能をぶっ込んできてたのにはびっくり。しかもそれに7年も気付かずにいたなんて。
これがあれば、Autodesk「Fusion 360」などの商用3DCADソフトを使うことなく、自分の目的は達成できそうだ。もちろん自分でプリントする機器の設計をするようならばFusion 360や同じくAutodeskのエントリー向け無償CAD「Tinkercad」を習得しておくに越したことはないのだが。TinkercadはWebブラウザ上で軽快に動作する。
オブジェクトを分割して出力する目的は、妻の写真から作成した3Dの全身モデルを等身大で印刷すること。全身を一度で出力することを目指すなら超巨大なプリンタが必要で、出力サービスに出しても1体で数十万円かかる。分割して出力できれば、自分が持っているような小型3Dプリンタでも可能なはず。
そんなわけで、分割したモデルの出力を、まずはELEGOO MARSで試してみた。3D人物モデリングソフト「Character Creator 3」とそのプラグイン「HeadShot」で写真から生成した3Dモデルにポーズをつけて.objフォーマットでエクスポート。それを3D Builderで読み込む。
読み込んだオブジェクトを平面で切って、必要な部分だけ残して保存する。今回は全身モデルから比較的小さなサイズに収まる「胸像」に相当する部分だけを保存し、ELEGOO MARSのスライサーである「CHITUBOX」に読み込む。9時間ほどかけて、120×68×150mmという出力できる最大サイズに近い、手のひらに乗るくらいの胸像が完成した。
このサイズになると、目鼻立ちがはっきりと分かり、触ると少しだけ思い出がよみがえる。白内障で目がほとんど見えなくなった母に贈ったら喜んでくれるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR