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コロナ禍で脚光浴びるRPA 企業が「業務自動化」に今対応すべき理由(1/2 ページ)

» 2020年08月21日 12時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めてから約半年が経過した。当初は事態の収束に楽観的な見方もあったが、結局のところ抑え込みに成功したのは中国などごく一部の国だけで、欧米諸国の多くでは今も感染者数は増え続けており、日本も同様だ。

 日本では緊急事態宣言の解除後に再び感染者数が増加。宣言解除とともに経済活動で人の動きが活発になったのが、やはりその一因に挙げられるだろう。

 こうした状況を見れば、人類と新型コロナの戦いは少なくとも短期戦にはならず、新型コロナ流行前の日常にすぐ戻れるとは考えない方が正しいといえる。

 このいわゆる「Withコロナ」「Afterコロナ」と呼ばれる状況では、企業は従業員の安全を確保しながらビジネスを継続し、成長させなければならない。その手段として当然最初に挙げられるのは「テレワーク」だが、ここでもう一つ注目したいものがある。「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)に代表される、業務の自動化・省人化だ。

コロナ禍でRPAに脚光

 RPAはPCでの定型的な業務を、人の代わりにプログラムが行えるようにするもの。プログラマーやエンジニアでなくてもプログラムを作成できるのが特徴だ。PCでの作業を代替することからIT・ネット企業での活用が主と思われがちだが、このコロナ禍ではそれ以外の業種での活用が目立つ。

 例えば日清食品は、これまで手作業で行っていた「出荷案内リスト」の送信業務をRPAで自動化した。従来は店頭の在庫や欠品状況のリストを見て営業が把握し、どの店舗にいくつ商品を補充するかをFAXで各得意先の担当部署に連絡するなど、紙ベースで業務を行っていた。しかし同社はテレワークへの業務移行を進めるべく、これをデジタル化。RPAの大手UiPathのツールを使い、リストのPDFを自動で仕分け、各店舗向けのFAXもPCから自動で送れるようにした。

 公的機関では茨城県庁がRPAを活用。新型コロナの感染症拡大防止協力金の申請処理をUiPathのAI-OCRで読み取り、システムに自動的に渡すことで、人力に比べて1処理当たり80%の労力削減効果を得たとしている。

日清食品の事例茨城県庁の事例 日清食品の事例(左)と茨城県庁の事例(右)

 政府も新型コロナ対策にRPAやAIの活用を推進するとして、UiPathと協定を結んだ。コロナ禍での企業のデジタルシフトを共同で支援する考えだ。

 つまり、この感染症流行下では幅広い業種で働き方の変革を余儀なくされ、その方向はテレワークシステムや、RPAなど自動化ソリューションを用いたデジタルシフトへ向いている。

 しかし、突然やってきたデジタルシフトの波にどう乗ればいいのか判断しかねている企業もあるだろう。コロナ禍での各企業のRPA活用状況や今後の見通しについて、UiPathの長谷川康一代表取締役CEOに聞いた。

システム構築に3年かけて、7年使う時代は終わった

 「今が分岐点なのだと思う」──長谷川CEOはこう話す。

UiPathの長谷川康一代表取締役CEO

 「行動が制限される中、事業継続はもちろん、新しいビジネスも生み出して企業は成長していく必要がある。こうした新しい業務を考えるときに、(例えば10年間の計画で)従来のように3年かけてシステムを構築し、7年など長期にわたって同じシステムを利用するのではなく、既存のシステムをRPAでつなげて短期間に構築し、必要に応じて素早く組み直すというサイクルを回せるようにすることが重要だと考えている」(同)

 RPAが向いている作業は「単純」「大量」「簡単な繰り返し」だといわれる。しかし新たな業務ともなれば、RPAでつなぐにも限界がありそうに思える。他にも、現場レベルでの改善には役立ちやすい反面、プログラムが適切に管理されず“野良化”しやすいともいわれる。セキュリティやガバナンスを重んじる日本の企業で、RPAはどこまで適用できるのか。

 長谷川CEOは「RPAの性質は教科書的には確かにそうだ。しかし日本では『少量』『複雑』『分岐のある繰り返し』の作業にニーズがあり、ここに適用できたとして喜ぶクライアントが多い」と話す。

 RPAは金融機関の単純な処理を大量に行うという用途から生まれたという。ただこうしたセキュリティの要求レベルが高い機関で使うには、表計算ソフトに毛が生えたようなRPAツールではセキュリティのニーズに応えられない。どこでどんなプログラムが動いているのか、可視化できるRPAツールの導入が必要とした。

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