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EpicとAppleの対決で改めて考える「配信プラットフォームの役割」(1/3 ページ)

» 2020年08月27日 08時22分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 8月14日に起きた、人気ゲーム「Fortnite」がApp Store、Google Play Storeから削除されたことに端を発したEpic GamesとApple、Googleの戦いは、特に「対Apple」を軸に拡大傾向であり、まだ解決の形は見えない。ひとつの期限が8月28日といわれているが、それまではもう幾日もない状況だ。

 この件についてはいろいろな見方がある。「30%は高い」「自由がない」とEpic Games側に立つ人もいれば、「ルールはルールである」「Epic GamesはFortniteのプレイヤーを人質にして交渉している」とEpic Gamesのやり方を非難する人もいる。筆者はどちらの意見も理解できるが、Epic Gamesのやり方は強引すぎてユーザー不在ではないか、と思っている。

photo AppleのCM「1984」をネタにした「198Fortnite」で攻撃

 だが、今回の話題は、3社の戦いの勝者が誰かを決めるものではない。これを機会に、「配信プラットフォームの役割」がなんなのか、改めて整理してみたい。今回の問題の根幹も、そこから見えてくるはずだからだ。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年8月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

配信プラットフォームの本質は「データベース」である

 配信プラットフォームの最大の役割は、「消費者の窓口になる」=ストア機能であることに疑いはない。

 ストア機能は分解すれば、

  • 消費者が目的の商品を探し、購入できること
  • 消費者に商品をおすすめし、売り上げ拡大を促進すること
  • 消費者からの決済を担当し、適切な売り上げ金を「商品の仕入れ元に支払う」こと

が挙げられる。さらに、一番下の項目に絡み、

  • 顧客の決済関連情報と、これまでの購入履歴を記録しておき、再入手やサポートに生かす

という要素が必要になる。ワンタイム購入のみのストアなら顧客履歴の管理は限定的でも構わないが、再ダウンロード機能を備えるなら必須だ。

 大量の商品の情報をもち、その購入情報を顧客単位で管理する。すなわち「データベース」こそが配信プラットフォームの本質であり、「データベースを管理し、それを売り場とする」ことが配信プラットフォームの役割、と定義できる。

 この要素の元祖は、Appleが2003年にスタートした音楽配信「iTunes Store」(当時はiTunes Music Storeだった)といっていい。もちろん、それぞれの要素はiTunes Storeよりも前にあったものだが、1つにまとまり、巨大な存在になったという意味では、iTunes Storeが大きなきっかけであるのは間違いない。App StoreもGoogle Play Storeも、そしてKindle Storeも、「商品と消費者にとってのデータベースを使ったストア」という点では同じである。

 データベースを核にしたストア、というのは、極めて重要かつ外せないものだ。あくまで技術的な要素でしかないが、その技術的要素が「良い店舗」を作る上で欠かせない要素でもある。データベースの速度や安定性、拡張性がいまいちであるため、サービスとしてユーザーの支持を得られない例はいくつもある。すなわち「快適さ」「使いやすさ」という、技術などを軸にして存在する要素は、良いストアを構築する上で欠かせない要素。別の言い方をすれば、巨大データベースを安定的に運営するために予算を使い続ける企業だけがプラットフォーマーになれるわけだ。

 ストアとしてコンテンツ(アプリ)供給元から選択されるには、売りやすい場であることが重要だ。快適さは当然ながら、「どのくらいの売れ行きなのか」といったマーケティング情報をある程度得られること、ときにはストア側と共同マーケティングをし、販売拡大の機会を最大化できる仕組みも求められる。

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