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ハイプサイクルに新登場した「ヘルスパスポート」はウィズコロナ時代に何をもたらすか新連載「ウィズコロナ時代のテクノロジー」(1/3 ページ)

» 2020年08月31日 17時02分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 瞬く間に全世界に広がった、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。日本では第2波の終息が見えてきたが、再び新規感染者数が上昇に転じないとも、また第3波、第4波が到来しないとも限らない。実際に終息を見越して経済活動の再開を優先した国や地域では、パンデミックが拡大する傾向に転じている。新型コロナウイルス登場以前の状態に戻るのではなく、その存在を前提として新たな社会や生活の様式を模索する――いわゆる「ウィズコロナ」時代の到来が現実味を帯びてきている。

 こうした状況において、テクノロジーはどのように活用され、また世界を変えていくのか。この新連載では具体的な取り組みを探ってみたい。

ガートナーが予測した2つの「ウィズコロナ」テクノロジー

 テクノロジー系調査会社の米Gartnerは、2020年8月19日に「先進テクノロジーのハイプサイクル」2020年版を発表した。ハイプサイクルは、あるテクノロジーが普及のどの段階にあり、どのくらいの速さで一般に普及する可能性があるか(その過程で消えてなくなるものもあるが)を示したものだ。もちろんあくまで予測だが、いまどのようなテクノロジーが登場し、注目を集めているかというトレンドを把握することができる。

 そして今回のハイプサイクルの中に、COVID-19に関連したテクノロジーが2つ登場し、しかも急速に普及すると予測されている。それは「ソーシャルディスタンシングテクノロジー」と「ヘルスパスポート」の2つだ。

 ソーシャルディスタンシングテクノロジーは、文字通りソーシャルディスタンスを実現する技術だ。ある意味で皮肉な話だが、物理的な距離を乗り越えるのが難しい相手とコミュニケーションするために発展してきた各種技術が、逆にその物理的な距離を取ることを可能にする技術として使われようとしている。

 代表例がビデオ会議システムだろう。例えばその一つであるZoomは、今回のパンデミックで知名度が大きく向上し、2019年末からのたった4カ月間で、1日あたり会議参加者数が1000万人から3億人以上へと急成長したと報じられている。Zoomは企業だけでなく教育機関でも活用されるようになっており、外出自粛期間中には、多くの学校で急きょオンライン授業を行うインフラとして利用する例が見られた。

 こうしたソーシャルディスタンスを実現するテクノロジーは、私たちの文化も変えようとしている。大げさに聞こえるかもしれないが、例えば「リモート飲み会」に大きな注目が集まったり、コメンテーターやひな壇芸人がリモートで参加するテレビ番組が普通につくられるようになったり、映画のロードショーとネット配信を同時に開始したり(あるいはネット配信のみにしたり)といったことが起きている。特定の物理的空間に集まらないことを否定的に捉えるのではなく、逆に積極的に肯定して、価値を見いだそうとする動きが高まると予想される。それを支える存在として、ソーシャルディスタンシングテクノロジーはガートナーの予測通り、短期間で広く普及する可能性が高い。

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