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» 2020年09月11日 18時30分 公開

医療事務をどんどん自動化したくなる――病院のRPA導入体験談 雑務なくして精神負担減 (2/2)

[谷井将人,ITmedia]
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精神負担はかなり軽減 次のRPA開発にも意欲

 作ったRPAの活用で短縮できる時間は1人当たり月間10時間程度を見込む。月間の労働時間全体から見るとあまり大きな数字ではないが、“できればやりたくない作業”からの解放は、実際の時間以上に精神的な負担を解消できる。

 人間より素早く正確に作業を実行できるというメリットから、「人間が作業する場合は、ミスがないよう結局チェックが必要になるが、RPAなら完全に任せられるため、安心感もある」(吉野さん)という。

 吉野さんは作業時間の短縮で残業時間の削減や、これまで時間の都合で注力できていなかった作業への時間確保にもなると期待を寄せる。精神的な負担の軽減で、その他の作業でのミスの軽減や作業効率の向上、従業員の体調などに好影響が出るなど、実際の数字以上の成果にもつながる可能性がある。

 RPA開発をした従業員は、次のRPA開発にも積極的な姿勢を見せている。「RPAで浮かせた時間で次のRPA開発ができる」「自分の作業が楽になったら、今度は他の人の作業も楽にしてあげたくなる」などの声もあり、RPA導入は今後も広がりを見せそうだ。

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運用面、責任面での懸念も

 病院内では大きな反発もなくスムーズに導入が進んでいるRPAだが、運用面や責任面では懸念も残る。

 一つは「開発した本人が現場を離れたらRPAはどうなるのか」という問題だ。RPA開発を行っているのは院内でもごく少数。開発した本人が異動や退職で現場を離れた際、RPAが壊れたら誰もメンテナンスができない状態になってしまうのではないかという懸念がある。

 現在は運用マニュアルの整備を進めているが、開発の段階でも情報共有を積極的に行っている。月に1回は開発者同士で集まって、制作中のRPAの概要や作業の進捗状況などを共有。この集まりが開発者同士のモチベーション向上につながる面もあるという。

 もう一つは「RPA実行時に問題が起きた場合の責任はどこにあるのか」という問題だ。同病院では、責任の所在はRPAの実行者本人にあると定めた。RPAを動かす際は、実行者本人の権限で各種システムにアクセスし、本人の責任の下で行うようにしている。

 運用や責任の他に「RPAに業務を任せっきりにしていると、人間側が業務内容を忘れてしまうのでは」という不安もあるという。吉野さんは「忘れてもいい作業は全てRPAに任せてしまい、そのような不安もない状態がいい」とし、「業務をRPAと一緒に行う前提で考えていけるようになれば」と話す。

 滋賀医科大学では、新たなツールを導入することへの抵抗やRPAの効果を疑問視する声などもあった。滋賀医科大学医学部附属病院はテストケースとして成果を積み上げる方針で、大学側もRPA導入に前向きな姿勢を見せ始めているという。

 同病院では9月中にRPAを動かすためのサーバを構築し、12月末までには本番環境での運用を始める予定。業務負担も月間100時間単位で減らすことを目標に本格稼働の準備を続ける。

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