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「PlayStation 5」は次の6年で何を担うのか 実機プレイで分かったこと(2/4 ページ)

» 2020年10月05日 13時49分 公開
[松尾公也ITmedia]

新しいコントローラーを中心とした新しい体験

 都内某所の地下で初めて見たPS5は、Ultra HD Blu-ray Discドライブを備えた上位モデル。4万9980円(税別)だ。1万円安い「デジタル・エディション」と違い、円盤を挿入するためのスリットが下部にある。

 PS5になって一番分かりやすい変化は、本体とゲームコントローラーのデザインだろう。本体はかなり高さのある縦型がデフォルト(横置きも可能)で、白いパンか餅に黒餡がはさまれたような格好。その黒餡の部分は微妙な曲面を描いている。初代、PS2、PS4とスクエアだったこれまでのPSデザイン(PS3は除く)とは一線を画すものだ。

 390×260x104mmという大きな筐体と曲面デザインには理由がある。今回PS5が搭載しているCPUは「Ryzen Zen 2」アーキテクチャ(8コア16スレッド、最大3.5GHz)、GPUは「Radeon RDNA-2」アーキテクチャをベース(最大2.23GHz)。これらはゲーミングPCの世界でも中〜上位に相当するもので、それなりの冷却システムが必要。強力なファンをぶん回す必要がある。ただ、SIEによればPS5では十分なエアフローが確保され、ファンノイズは最小に抑えているという。SIEがこのデザインで狙ったのはここだ。

 実際、激しい戦闘中に本体に顔を近づけて音を聞いてみたが、気になるレベルのファンノイズではなかった。ノイズを排除するのには理由がある。PS5の特徴の1つである空間オーディオ「Tempest 3Dオーディオ」の効果を最大限にするためだ。

 空間オーディオの一種であるTempest 3Dオーディオは、ゲームサウンドに実在感と定位感を与えるものだという説明で、敵の存在を音で感じ取ったり、雨の降る音からそれが当たる物体の区別が付いたりするという。今回の試遊では、そのはっきりした効果を体験したわけではないが、コントローラーの新機能と組み合わせると効果は大きいようだ。

 新しいゲームコントローラーである「DualSenseワイヤレスコントローラー」に搭載されている「ハプティックフィードバック」と「アダプティブトリガー」については、試遊したゲーム「ASTRO's PLAYROOM」でその機能を発揮した。このゲームはPS5にプリインストールされる。

 ハプティックフィードバックによる振動は、PS4用のコントローラー「DUALSHOCK 4」の単純な振動から明らかに進化していて、主人公が動く路面の違い(氷、砂、水など)でグリッピングの感触が変化するのが分かる。

 L2とR2ボタンに搭載されたアダプティブトリガーでは、トリガーを引いたときの抵抗が可変となる。つまり、強く引き絞らないといけない場合には、このトリガーが強く反発するといった演出ができる。ASTRO's PLAYROOMでは、主人公がヒモ状の物体を引っ張って放すときに使うのだが、これはかなりクセになる。ゲームコントローラーでこれだけリアルなフィードバックを得られることはないので、もっと使っていたいという欲求が生まれてきた。

photo DualSenseのジャイロを使って傾けて、その角度でアクティブトリガーを引き絞って放し、ジャンプする
photo DualSenseのL2、R2は可変抵抗のトリガーだ

 この3つはそれぞれ独立した機能であるが、これらが一体化することで総合的な「その場に没入し」「ゲームの中で実際にプレイしている」感覚を生み出す。PS5のDualSenseコントローラーにはアップグレードされたスピーカー機能があり、そこからも音が出る。ハプティックフィードバックの振動、コントローラーのスピーカー、Tempestの3Dオーディオ、そしてリアルに固さが変化するアダプティブトリガー。これらが巧みに組み合わされたゲームに慣れてしまうと、通常のゲームプレイでは物足りなさを感じるかもしれない。

 プレイヤーの気持ちをゲームから離脱させないための工夫はもう1つある。高速SSD技術だ。PS4からPlayStationのリード・システムアーキテクトを務めているマーク・サーニー氏によれば、PS5では独自開発のSSDコントローラーチップによって転送しながら圧縮解凍することで通常の4倍の転送スピードを実現しているというのだ。

 それで何が可能になるかというと、一番分かりやすいのはインストール時間の短縮とロードの速さだ。今回の試遊では、今回の試遊ではアクションRPG「Godfall」でボスキャラに何度もやられてしまったが、その度にロードがほぼ一瞬で終わるのには驚いた。ロードが長すぎてゲームから覚めてしまうということはなくなるかもしれない。

photo 再起動も高速。起動時には筐体上部が青く光る

 さらに、ゲーム開発手法自体も変わってくる可能性がある。これまではプレイヤーが冒険できる領域を狭めたり、出せる武器やクリーチャーを制限したりと、さまざまな工夫がされていたゲームシステムが、その制限から解放される。

 SIEとしては、まずPS5向けに自由なやり方で作り、それを「まだ制限のある」ライバルプラットフォーム向けに調整していく、というのを期待している様だ。「制限がない」というのがメリットとなるか、逆に従来とは異なる作り方になるのが嫌われてせっかくの高速SSDのメリットが半分しか使われなくなってしまうのかはまだ分からない。

 ゲーム体験を大幅に向上させる、空間オーディオ、ハプティックフィードバック、アダプティブトリガーといった独自機能への対応と併せて、今後出てくるタイトルのPS5最適化具合には要注目だ。

 なお、大幅に改良されたというユーザーインタフェースについては今回、体験することはできなかった。また、ゲームコントローラーの決定ボタンが○ではなく、×になったということで、日本のユーザーは戸惑う部分が大きいだろうが、これはもう世界の流れなので慣れるしかないだろう。

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