銀座駅を上から見ると、銀座線ホームと丸ノ内線ホームが並行に並び、その間を日比谷線ホームが垂直に通り抜けるような構造になっている。各線ホームの上にも地下空間があり、改札外の自由通路として使われている。
その通路に設けられたのが、デスクが備え付けられたワークスペースだ。電源ポートもあり、PCの充電器などを繋いでテレワークにも対応できる。開放的な空間ではあるものの、多様な働き方への変化に応える新たな試みといえる。
地下鉄の駅は特殊な空間だ。地下にありながら毎日多くの人が往来し、終電後の数時間しか工事ができない。また、銀座駅の場合は設計が古いこともあり、天井や床を大きく広げるような改修は難しい。そして、一度設置された設備は数十年は継続して用いられる。
こうした限られた設計条件の下で、オリエンテーションサインは開放感のある駅の空間作りを実現する、有望なアイデアだという。
このコンセプトは公募から選ばれた。実現に当たって特殊な技術を使用したわけではないが、ここ20年で大幅に普及したLEDライトを大量に使用し、間接照明として活用している。そうした意味では現代ならではのコンセプトで歴史ある駅を生まれ変わらせたともいえるだろう。
なお、オリエンテーションサインは駅のホームや改札口の周辺に留まっており、通路などには展開されていない。近づいたときに各路線に近い改札だということは分かるが、従来のサイン類の代わりとして、乗客を案内する機能を担っているわけではないようだ。
銀座駅のリニューアルはひとまずの完成を迎えたが、今後は乗客に見えないバックヤードの設備などを中心に、2023年度まで改修を続けるとしている。一部の出口についても、追加でオリエンテーションサインが導入される予定だ。
今後、オリエンテーションサインを他の駅などへ展開するかどうかについて東京メトロは方針を示していない。新しい銀座駅の反響次第では、駅の空間演出を担う新たな手法として定着する可能性もあるだろう。
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