新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークの導入が進む中、押印のためだけに出社せざるを得なくなる“ハンコ出社”が話題になった。今では官民で脱ハンコの動きが加速している。そんな中で印鑑の製造販売を行うシヤチハタは「今後については非常に危機感を持っている」としながらも、自社の電子印鑑のサービスが「ようやく役に立つ日が来た」と意気込んでいる。
同社の舟橋正剛社長は11月16日の記者会見で、脱ハンコの流れについて「ハンコは文化として根付いているので、良いところは残し、不便なところは運用を見直すべき」とする見方を示した。
舟橋社長によると、ハンコには本人確認と意思確認という2つの役割があるという。本人確認は押印によって本人であることを証明すること、意思確認は書類が本人の意思に基づいて作成されたものだと証明する役割のことを言う。
舟橋社長は、政府が進めている脱ハンコは本人確認のための押印をなくすことだと説明。「慣習や行われていた不必要な押印は見直し、少しでも利用者が便利に生活できるようにしないといけない」と話した。
一方、ペーパーレスと脱ハンコの流れには非常に危機感を持っているというのが現状だという。その中で同社が活路を見いだしているのが電子印鑑サービスだ。
同社が電子印鑑サービスを始めたのは1995年。オフラインで動作するソフトウェアとして提供していたが、2012年からはサービスをクラウド上に移植。15年以降はBox Japanや電子署名サービスを展開する米DocuSignと協力するなどサービス強化を図っている。
コロナ禍を受け、同社は電子印鑑サービス「パソコン決済Cloud」を3月から6月末まで無料開放した。それまで月間約2000件だった申込件数が3月末には約1万5000件に増え、6月末には27万件に上った。
同サービスは、契約書類などをクラウド上で管理し、編集や電子印鑑での押印ができるSaaS。紙の書類と同様のプロセスをオンライン上で再現することで、ITツールに慣れていなくても利用できるようにしたとしている。
シヤチハタは今後、セキュリティや改ざん対策などを強化した「Shachihata Cloud Business」を11月24日から提供。「アナログのハンコが使われているように、デジタルでもシヤチハタが必要だと思ってもらえる状況を目指す」(舟橋社長)としている。
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