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社長の投稿に、絵文字で返事OK――「Slack」を全社導入したソフトバンクの活用術

» 2020年11月18日 15時04分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 コロナ禍を受け、企業規模を問わずテレワークの導入が広がっている。柔軟に働けるようになった一方で、従業員同士のコミュニケーション不足を指摘する声もある。そうした中で、4月にテレワークを本格導入したソフトバンクはこれまで、部門や立場を超えたコミュニケーションに取り組んできた。

 10月には取り組みの一環で、コミュニケーションツール「Slack」を全社導入。現在は約5万人分のアカウントを用意し、段階的に利用を進めている。導入から日は浅いが、経営層の投稿に、従業員が絵文字でリアクションをするなど、フランクなやりとりができているという。

 「コロナ禍によって、コミュニケーションの新たな方法が一気に加速した」。ソフトバンクの宮内謙社長は、Slack Japanがこのほど開いたカンファレンス「Slack Tour Japan Online」の基調講演でこう強調した。

photo Slackの活用術を話す宮内謙社長。自身の投稿には絵文字でのリアクションが寄せられている

 ソフトバンクはかつてオフィスで頻繁に会議をしており、「会議が多い会社だと新人に驚かれる事もあった」と宮内社長は明かす。当たり前だった対面での会議をなくすことで「4月はどうなることかと不安だった」(宮内社長、以下同)というが、今では定例会議や進捗報告といった多様な打ち合わせを、Slackやビデオ会議ツールの「Zoom」で実施。体制を大きく変えることができたとしている。

社長の意見に、社員が絵文字で反応

 宮内社長もSlackを積極的に使っており、社員に向けて自身の意見などを発信するチャンネルを開設。10月に行ったオンラインカンファレンス「SoftBank World 2020」の視聴者数が10万人を超えたことや、福岡ソフトバンクホークスがリーグ優勝したことなどを社員に報告している。

 こうした投稿に対して、Slack上では社員から「すごい★」「エモい」「熱男」といった絵文字でリアクションが寄せられるなど、立場による壁を感じさせないコミュニケーションが進んでいるという。

 宮内社長はSlackで社員からアイデアを募集することもある。直近では、法人向けに販売を請け負っているZoomの拡販に向けて「意見があればください」と呼びかけた。

 この投稿を受けて、社員からは「Zoom専用アプライアンス(ハードウェア)の取り扱いをご検討ください」といった意見が30件ほど寄せられたといい、「組織を超えた意見交換ができている」と宮内社長は手応えを示した。

photo 宮内社長がSlackでアイデアを募った際の投稿

全国のショップ店員がSlackで交流

 ソフトバンクはこれらに加え、全国のソフトバンクショップの店員が「iPhone 12」の売れ行きを報告するチャンネル、社内の問い合わせにAIが自動で回答するチャンネル、RPAが営業の進捗(しんちょく)状況を自動で取得し、Slackに投稿するチャンネル――などを作成・活用している。

 中でもショップスタッフが参加するチャンネルでは、北海道から沖縄まで津々浦々の店員が参加し、売上アップにつながる商品の陳列方法を紹介し合うなど、対面では難しかったコミュニケーションを行っている。「企業が大きくなればなるほど、バリア(組織間の壁)ができてしまうが、これを解消できた」と宮内社長は自信を見せた。

photo ソフトバンクショップの店員が交流するチャンネル

 宮内社長によれば、ソフトバンクグループ傘下でSlackを全社導入している企業は、現時点ではソフトバンクとヤフーなど。今後は「グループ全体のシナジーを強めたい」との観点から、ZOZOやPayPay、米The We Companyなど国内外のグループ企業に展開する計画という。

競合するTeamsもユーザー急増

 コロナ禍に伴うテレワーク普及の影響でSlackのユーザー数は伸びており、3月末時点でグローバルでの同時接続ユーザー数は1250万人に達している(3月頭の時点では1000万人)。日本市場での日間アクティブユーザー数は、今夏の時点で100万人超という。

 だが、競合する米Microsoftのコミュニケーションツール「Microsoft Teams」もシェアを急拡大。10月時点での日間アクティブユーザー数(グローバル)は1億5000万人に上る。単純比較はできないが、一部では「TeamsはSlackを超えた」とも報じられている。

 Teamsとの顧客獲得競争を制する上では、米Slack Technologiesが「米国に次ぐ第二の市場」とみる日本市場で、ソフトバンクのような大口顧客を獲得することが重要になりそうだ。それに向け、Slackがどんな機能拡充やマーケティングを行うのか、今後の展開に注目だ。

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