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新政権で米宇宙政策はどうなる? NASA「アルテミス計画」 次期長官の動向にも注目集まる(1/4 ページ)

» 2020年11月26日 18時56分 公開
[秋山文野ITmedia]

 トランプ米大統領が政権移行への協力を認める方向となり、バイデン次期大統領の閣僚人事が進められている。トランプ政権下で締結された米国主導の有人月面探査「アルテミス計画」が注目を集める一方、これまで政権交代によって消えた宇宙政策もある。新政権での宇宙政策はどうなるのか──。宇宙専門の米メディアの報道などから、米航空宇宙局(NASA)を始めとする科学関係の政府機関の動向を追った。

宇宙関連計画は基本的に長期スパン 複数の政権をまたぐこともざら

 宇宙政策はそもそも、経済や新型コロナウイルス感染症対策といった課題に比べ、大統領選の争点になりにくいという事情がある。NASAの宇宙探査など大型の計画の実施には時間がかかり、5年、10年のスパンで複数の政権をまたいで進められることも少なくない。

 例えば、11月15日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野口聡一宇宙飛行士が搭乗したSpace Xの新型宇宙船「Crew Dragon」(クルードラゴン)の開発までには、2005年のブッシュ政権時代に計画の策定、オバマ政権下で10年にSpace Xなどの有人宇宙船開発企業を選定、トランプ政権で20年に実現という経緯があった。つまり、地球低軌道への宇宙輸送民間化は計画から実現まで15年の年月がかかっている。

 バイデン政権となる今後は、民間宇宙ステーションの開発へと発展する方向となっており、低軌道の民間化は恐らく20年以上の時間をかけて進められる。

photo 2020年、ついに実現した民間企業による地球低軌道への宇宙飛行士輸送。NASAとの契約の元、Space Xの「クルードラゴン」宇宙船が11月に野口聡一宇宙飛行士ら4人をISSへと送った Photo Credit: (NASA/Joel Kowsky)

政権交代に翻弄された宇宙計画

 もちろん中には政権交代によって消えた宇宙計画もある。

 共和党のブッシュ政権から民主党のオバマ政権に移行した後は、大型ロケット「アレス」開発を含む月・火星探査計画「コンステレーション計画」が中止となり、宇宙探査向けの大型ロケット「SLS」と「オライオン」宇宙船の開発に切り替えられた。

 オバマ政権時代に小惑星探査を盛り込んだ「小惑星再配置ミッション」(ARM)は議会が難色を示したこともあり、トランプ政権に入った18年にはNASA予算から消える形で中止となっている。

 ではバイデン新大統領がどの程度まで現在の宇宙計画を引き継ぐのか、また新たな計画を始動するのかという点だが、まだ情報は少ない。

 これまで20年の選挙戦中に両大統領候補が宇宙政策を巡って論戦するといったことはなかった。また新政権の宇宙政策はまだ発表されておらず、政権移行チームの政府機関評価委員がNASAを始めとする機関のレビューを行っている最中だ。

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