ただし、1社が成功したら、ライバル会社も参入するのが中国だ。Xiaomiがスマート家電と小米之家、そしてエコシステムで成功するやいなや、Huawei、OPPO、vivo、Honorも追随するようにスマート家電の開発を強化すると発表。小米之家と同様に、各社のショップで、スマホに加えて自社ブランドのスマート家電を販売するようになった。
後発企業の製品ラインアップはXiaomiほど多くはないが、HuaweiやOPPOがリリースしたスマートテレビは中国で注目を集めている。
両社のテレビは、オンデマンドで映像コンテンツを再生するだけにとどまらない。ユーザーはスマホをテレビ用のリモコンとして使えるほか、テレビの画面を分割し、その中でスマホゲームをプレイできる。オンラインでのフィットネスサービスやビデオ会議なども利用できる。単なるテレビではなく、スマホと共存し、番組も見られる大型ディスプレイといった方が正確かもしれない。
まだ大きな動きは見せてはいないが、HuaweiやOPPOはこの次世代テレビを核としつつ、自社のエコシステムを構築し、このテレビに話しかけたり、スマホを接続したりすることで操作できるスマート家電を続々とリリースする可能性がある。
スマホメーカー以外では、AlibabaやBaiduがスマートスピーカーをハブとして、Xiaomiと同じようにエコシステムを構築し、家電メーカーを自社グループに取り込もうとしている。
両社のスマートスピーカー「天猫精霊」「小度」は安価に出回っていて、場合によっては携帯電話を契約した際のおまけとして無料で配られることもある。新しいテクノロジーに敏感なアーリーアダプター層以外にも普及しており、これらと接続して音声で操作できるライトやカーテン、家電なども多数リリースされている。
AlibabaやBaiduが出しているスマートスピーカーや、これらに対応するスマート家電はもちろん、Xiaomiなどのスマホメーカーが開発するスマート家電と競合する。現時点では各社が提携し、Xiaomi製のスマートスピーカーに話しかけると、他社製のスマート家電が動く――といったことは実現していない。各社はしばらく個別に勢力を拡大し、細かな機能追加や価格変更で“体力勝負”するチキンレースを展開するだろう。プラットフォーマーであるメーカー各社にとっては、安易に他社製品と連携するわけにはいかないのだ。
中国のインターネット業界ではこれまでも、11月11日の「独身の日」におけるECサイトの低価格競争や、動画サイトの配信権購入競争など、多くの企業間でチキンレースがあった。その中で、提携している企業同士でいざこざが発生した場合は、もめ事の原因を作った企業が、怒らせてしまった企業から、製品やサービスの連携を遮断されてしまうことも珍しくない。
スマート家電領域でもこれを懸念し、プラットフォーマーである大手企業は他社と提携したがらない。なにせ提携相手の機嫌を損ねたら、自社の製品の利便性が下がり、企業・ユーザーともに不利益を被るからだ。
大企業同士で手を組み、製品をさらにスケールさせるのが難しい中で、スマホメーカーやAlibaba、Baiduが相次いでスマート家電を打ち出している背景には、中国ならではの事情がある。実は中国政府は、経済の発展に向けた「5カ年計画」の中で、スマート家電の普及を国家の目標として挙げているのだ。
そのため、スマート家電の提供元が乱立し、大小さまざまな家電メーカーが、価格や機能を競うチキンレースはしばらく続くだろう。経済やテクノロジーの進歩が著しく、国民の生活環境が変化している中国では、一般消費者の「家の中に新しい家電を置きたい」というニーズが日本よりも強い。
メーカー側は大変だろうが、一般消費者の目線で考えると、激しい競争の末に、高性能なスマート家電をお得な価格で買えるのはありがたい。政府の方針も相まって、中国のスマート家電普及率は今後も高まりそうだ。
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