日本政府が1住所当たり2枚配布している“アベノマスク”に粗悪品が混ざっていたと報じられている。そのマスクの中には、中国製のものも含まれているようだ。中国は世界最大のマスクの生産地だが、中国産マスクに不安を抱いている人も少なくないようで、Googleの検索窓に「中国産」と入力すると「中国産のマスク使って大丈夫」「中国産マスク不良品」といったキーワードが予想表示される。新型コロナウイルスの発生源と目されている中国だが、現地で作られるマスクはそんなにひどいのか。また、日本よりも感染者数も人口も多い中で、中国人はどうやって“使えるマスク”を入手しているのか。
中国を専門とする筆者は、もし誰かに「中国で粗悪マスクが作られているか?」と聞かれたら、「作られているし、頻繁に粗悪マスク工場の摘発ニュースが報じられている」と答える。中国最高人民検察院の4月上旬の発表によれば、2003年に感染が拡大したSARSと比較すると、新型コロナ関連での逮捕者は8倍、犯罪件数は5倍だという。その中には粗悪品のマスク製造業者(材料の布メーカーから、組み立てを担う企業までが該当する)やマスク転売業者も多く含まれる。
粗悪マスク工場の中には、マスク特需とばかりに、本業ではない一般消費者などの手作り(以降は皮肉を込めて“家庭内手工業”と表現する)で稼働しているところもあり、近年のハイテクブームであまり報じられなくなった昔ながらの中国のダメな側面が浮き彫りになっている。
本記事では中国のマスク事情について解説するが、正確に伝えるために、新型コロナの感染者が中国で増えていった時期と、世界各国に広がっていった時期に分けて紹介していきたい。
中国で感染者が増えていった頃、マスクのニーズは中国に集中していた。需要はあるが供給は足りず、早速ニセモノの存在が発覚したことや、マスクを外国から調達したことが次々に報道された。さらに、トルコでマスクを調達し、中国を助けようとするのと同時に一獲千金を狙う中国商人「マスクハンター」も現れ、ドキュメンタリー動画まで作られた。
玉石混交のECサイトからマスクを購入するとなれば、競争も激しく、値段がつり上げられる上に、粗悪品をつかまされるリスクもある。そのため中国庶民からすれば、「何でもいいから入手したい」というわけにはいかない。とある調査によると、中国でのマスクの購入経路は、友人知人から購入(45.3%)、提携するマスク供給企業から購入(35.4%)、地方政府の販売チャンネルから購入(18.9%)の順に多かった。中国は人と人とのつながり、つまるところコネが重視されるが、マスク不足でもそれが発揮されたわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR