DTP黎明期からMacでエディトリアルデザインに取り組んできたベテランデザイナー、菊池美範さんが経験する三度目のCPUアーキテクチャ変更はどうか? M1搭載MacBook Airが届いて2日で実戦配備した様子を語ってもらった。
MacBook Air(M1, 2020)がリリースされてからデザイナー仲間によく質問された。本当にちゃんと使えるの? プリンタが動かなくて困ることはない? Adobe CCは? モリサワパスポートやフォントワークスLETSは使えないんじゃ?
リリースされたばかりのApple Silicon搭載Macには、これらについての完璧な互換性は担保されていない(2020年12月3日現在)。一応動作するものの、まだβ版で安定した動作が保証がされていないものもある。それでも私はこうお答えしたい。
「特別定額給付金の10万円はもう使われてしまったかもしれないけど、迷っているのならそのお金をこのマシンに充てたつもりで買ってみてはどうですか。高い方じゃなく一番安いメモリ8G、256GのMacBook Airを。吊るしで十分ですよ」
制作環境の移行に慎重なプロのクリエイターにとって、Macの歴史は苦難の日々だった。68KからPowerPC、Intelへとプロセッサが変わっていく時代、なかなかリリースされないSystem 7に翻弄され、MacOS 9が動作する最後のPower Mac G4を血眼になって探し求め、Mac OS Xでは泣きながら「QuarkXPressがまともに動かなくなるからG4マシンを返してほしい」と懇願するDTPデザイナーの後ろ姿……。
苦労をともに味わってきたベテランクリエイターにも、今回のMacBook Airは容易に快適なクリエイティブ環境が手に入る絶好のチャンスだ。2022年のうちにはmacOSのメインプラットフォームはApple Silicon搭載のMacが主流になる。そのときに備えてmacOS Big SurとM1プロセッサ搭載のMacBook Airを徹底的に使いつくす方が、新しい環境に慣れて移行が楽になるはずだ。
これまでサブ機として使用してきたMacBook Air(2020)はIntel Yプロセッサ最終モデルなのだが、このマシンも満足度は高かった。今回の新製品同様にメモリ8G、256Gの構成でAdobe CCもインストールして十分活躍している。
ただし、標準のメールアプリでのパフォーマンスに難があり、5つのメールボックスとスマートメールボックスで多くのスパム対策フィルターが動作すると起動と終了のプロセスにかなり時間がかかる。Safariでのブラウジングも、メモリ消費量の多いFacebookやLinkedInで日本語変換の遅延やフリーズが発生するため、比較的問題の出にくいFirefoxで代替することが多い。
これらの問題はメモリ消費のアラートを除いてM1プロセッサのMacBookで解決しており、体感速度も向上している。
ありがたいことに、M1 MacBook Airではウェビナーやオンライン会議でのバーチャル背景が使えるようになった。Core i3のYプロセッサ搭載のMacBook AirはZoomのバーチャル背景に対応しておらず、リアル背景を出したくない会議では苦労した。Evernote創始者が作ったプレゼンツール「mmhmm」の使用ではパームレストがプロセッサの熱で不快になることもなく、MacBook Pro 15インチのようにファンが回り続けて困ることもなく、静かで快適そのものである。
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