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「吊るしで十分ですよ」 M1搭載MacBook Airを手にしたデザイナーは言った(3/3 ページ)

» 2020年12月04日 07時00分 公開
[菊池美範ITmedia]
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実運用でのバッテリー持ちとWi-Fi環境

 バッテリーはよく持つ。日中の出先で数時間の作業なら電源アダプター不要なくらいだ。

 YプロセッサのMacBook Airや無印MacBookもバッテリーの持ちはよかったが、それ以上だ。Adobe CCアプリケーションをRosetta 2でずっと動かすと減りは早くなるが、それでも日帰り外出での電源アダプターは出番がないだろう。

 システム環境設定の「バッテリー」設定は出荷時設定のままPhotoshop CC 2021とInDesign CC 2021を同時に立ち上げ、100ページ超えの写真集データのレイアウトを調整しながらリンクデータの画像を開くというDTPの標準的な作業と、メールとSNSのメッセージを確認しながらサイトの管理画面をSafariで常時ウィンドウに出しておくという作業を1時間ほど続けた結果、バッテリー残量は100%から96%に減少しただけだった。

 これは私の通常業務における標準的な負荷なので、朝から夕方までバッテリーだけで仕事をしていてもバッテリー切れになることは考えにくい。その後も外出時に30〜60分ほどの作業をドトールコーヒーやスターバックスで行ったが、バッテリーが1%も減らないことさえあった。速報系の記事で報告されているバッテリー持ちの凄さは誇張ではない。

 Wi-Fi 6の恩恵は正直なところあまり体感できない。これは自宅&仕事場の環境がWi-Fi 6に非対応なことに加えて、自宅のインターネット回線はマンションタイプの共有VDSLなのでダウンロード/アップロードともに50〜60Mbps程度であることによるものだ。iPhone 12シリーズとの接続や、ギガビットのバックボーンに対応した回線とWi-Fi 6対応ルーターを整えないと恩恵は少ないだろう。

気になる外部デバイス接続の制限とパフォーマンス

 Intelプロセッサ搭載のMacBook ProにくらべるとM1プロセッサ搭載のMacBook Airは12月3日時点で幾つか制限がある。

 第1にThunderbolt 3/USB 4ポートを経由して接続できる外部ディスプレイは1台のみ。2台目の外部ディスプレイは諦めなくてはならない。第2に有線接続でのバックアップ用の外付けデバイスの接続が不安定になる場合があり、ユーザーによってはこの問題が解決するまではiCloudやDropbox、Adobe Cloudなどのクラウドストレージ頼みで運用することになる。

 筆者もYプロセッサのMacBook Airで使用していたG-Technologyの1TB G-DRIVEを付属のUSB-Cケーブル(USB 3.0対応)で接続、Big Surのディスクユーティリティで再フォーマットしたのちにTime Machineで最初のバックアップをすると、バックアップの後半で中断されたかのように著しい速度低下があった。

 中止と再開を2回実行してバックアップは完了し、これ以降の差分バックアップはいまのところ順調に実行されている。Thunderbolt 3もしくはUSB 3.1 Gen 2対応のストレージとケーブルなら問題ないのかもしれないが、手元にデバイスがなく検証はできなかった。

photo 付属の純正ケーブルを用いた接続においてプロセスが途中で止まったかのように速度が低下し、残り14分の表示がされてから終了まで100分近く時間がかかった。使用したG-Technologyの1TB G-DRIVEは2020年の3月にApple Storeで購入したもの

ほぼ理想に近い万能サブ機

 筆者はデザインワークを含めた業務の大半をMacBook Pro 15インチ (Late 2016) を4年近くメイン機として使用していた。この期間にメイン機トラブル時のサブ機としてMacBook 12インチやYプロセッサ搭載のMacBook Air13インチを併用していたが、今回リリースされたM1プロセッサ搭載のMacBook Airはこのメインとサブの関係をひっくり返してしまった。

 いま安定しているIntel版MacBook Proよりも、多少のリスクは覚悟の上でメイン機をこのM1プロセッサMacBook Airにして、しばらく運用してみようと思う。豊富な日本語フォントが必要なときや大量の画像処理は、4年選手のMacBook Pro 15インチとYプロセッサ搭載のMacBook Airの2台がその任に当たってもらうことにする。

  ベーシックモデルゆえ、メモリ/ストレージ容量は多くない。使い方によってはストレージ不足に陥ることはあるが、これを解決するためにはローカルストレージとは別にクラウドストレージを最大限活用することにした。Dropboxのデータ同期をスマートシンク(ファイルやフォルダーを[オンラインのみ]に設定し、ローカル側のストレージではフォルダのインデックスのみが表示される機能)で内蔵ストレージの使用量を節約することができる。ローカルバックアップはメイン機であるMacBook Pro 15側の内蔵ストレージと外付けディスクを同時進行でしっかりとっておく。256GBもあればアプリケーションと作業中のデータ程度はローカルストレージに保存できる。

 GPUが7コアしか動かない、メインメモリが8Gでは仕事に使えるかどうか不安だというご意見に対しては、自信を持ってこう答えることができる。

 「お手持ちのマシンにmacOS Big Surから始まる新しい制作環境を1台加えてみることを強くレコメンドします。近い将来にメイン機として仕事に使える環境を先行して体験できます。iOS版のアプリで遊べます(実用できるアプリは限られる上に完全な互換性はまだですが)。冷却ファンの動作もなくパームレストも長い時間自分の体温分しか温まりません。美しいRetinaディスプレイとモバイル機としては良質なキーボードが内蔵されています。こんなマシンが10万4800円(税別)の投資で手に入り、長持ちしそうなノートPCが他にあったらぜひ教えてほしいです」と。

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