このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東京工業大学と東京大学による研究チームが開発した「Realistic Volumetric 3D Display Using Physical Materials」は、さまざまな視点から裸眼視できる立体像を生成する3次元ディスプレイシステムだ。ウールやフェルトなどの実素材で作成した立体的なスクリーンを回転させ、それに合わせて投影した残像効果で立体像を作り出す。
スクリーンは複数の実素材を用い、円形をベースに立体的な螺旋形状で作る。プロトタイプ(高さ50mm、半径100mm)では、4分の1ずつ異なる素材(編んだ青いウール、白いフェルト、赤のベロア、茶のコットンなど)を貼り合わせている。
スクリーンは、全ての実素材が領域内を通過するよう、高速に回転させる。スクリーンの回転運動に同期して、観測視点に応じてリアルタイムに生成した複数のパターン光をプロジェクターから投影。パターン光を投影する瞬間に提示したい部分を照らし、これを連続かつ高速に行うことで、残像効果により立体像を表示する。
表示領域の最大ボクセル解像度は768×768×90、リフレッシュレートは25Hz、解像度は1024×768、フレームレートは9000fps。表示に必要なフレームレートは、リフレッシュレートと素材数、深度方向のボクセル解像度を掛け合わせて決定される。
このようにウール、フェルト、ベロア、コットンなどの実素材を駆使し、回転させながら計算したパターン光を投影することで、色や質感が混ざり合った多様な立体像を生成できる。
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