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» 2020年12月15日 19時30分 公開

食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界:4カ月で1000社導入、口コミで忘年会予約が殺到 オンライン飲み会フードボックスが人気のワケ (1/2)

企業向けオンライン飲み会用のフードボックスが人気だ。4カ月で1000社以上から利用されているという。“オン飲み疲れ”も存在する中、人気の理由を運営元に聞いた。

[武者良太,ITmedia]

 政府が緊急事態宣言を出した4月、人々は外出自粛や3密回避を求められ、レストランや居酒屋を利用すると周囲から眉をひそめられる事態となった。この期間に盛り上がったのがオンライン飲み会だ。「Zoom」や「Microsoft Teams」などWeb会議サービスを用いて参加メンバーがつながり、“NO密”な空間で会話と飲食を楽しむスタイルが広がった。

photo コロナ禍でオンライン飲み会が広がった(画像はイメージ)

 2016年ごろから始まった働き方改革の一環として広まったテレワークの導入に二の足を踏んでいた企業がテレワークへ切り替える例も多く、オンライン飲み会やオンラインランチミーティングなどが浸透するのではと個人的に感じていた。

 一方、ウェビナーやWeb会議では感じないストレスがオンライン飲み会では起こることも分かってきた。話し始めるきっかけをつかみにくいというか、会話を進めづらいのだ。次第に“オン飲み疲れ”“オン飲み離れ”がSNSなどで聞かれるようになった。

 そんな中、法人向けオンライン飲み会向けに食事と飲料を提供するサービスが登場した。ケータリングや社食の運営などを手掛けるノンピ(東京都港区)が開発した「nonpi foodbox」だ。1人3000円(税別送料込み、以下同)のランチプランや食事と酒類がセットになった3500円のプランなどを用意する。口コミなどで広まり、8月のローンチから1000社以上が利用し、12月はオンライン忘年会用の予約が殺到しているという。

 “オン飲み疲れ”もある中、なぜオンライン飲み会に特化したサービスが伸びているのだろうか。同社の取締役副社長・上形秀一郎さんに聞いた。

photo 食事と酒類がセットになった「nonpi foodbox」スタンダードプラン 和(3500円)

連載:食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界

ニューノーマル時代を迎え社会にますますテクノロジーが浸透する今、人の根本を支える“食”はどうなっていくのか――“食いしん坊”を自称するライターの武者良太さんと編集の安田が、テクノロジーと食が融合したフードテックの世界に迫ります。

オンライン飲みは準備が面倒

 ノンピは2004年にケータリング、デリバリーサービスをスタート。Google日本法人で社食の総料理長を務めた飯野直樹さんが参画し、グローバルなIT企業が食をどれだけ大事にしているかを理解している企業である。

photo ノンピの取締役副社長・上形秀一郎さん

 「Googleの思想は、おいしい食事から良質なコミュニケーションが生まれ、ウェルビーイングやチームビルディングにつながるというものです。そこから新しいアイデアが生まれると考えられています。GAFAと呼ばれる企業は社食がしっかりしており、企業の中で食事に対するプレゼンスが高いのです」(上形さん)

 対して「日本企業の社食は、地方の工場のような周りに飲食店がない環境でまかないとして始まったものから形態があまり変わっていません」と上形さんは言う。確かに、決められた時間内にエネルギーをチャージするため、早くて安くてお腹一杯になるメニューで構成されていることが少なくない。そこには食事の楽しみといえる彩りや他者とのコミュニケーションなどの要素が欠けている。「ビジネスパーソン向けの食事を提供する」という食文化は、日本企業にはまだ根付ききってないのかもしれない。

 彩りが華やかでありながらカロリーや栄養面にもこだわったノンピのケータリングサービスは、顧客の評価を得て注文数が増加。企業からの注文数も18年は4795件、19年は8264件と増えていった。

photo ノンピが提供するケータリングの例。色鮮やかでおいしそうなメニューが並ぶ(Webサイトより抜粋)

 20年はさらに伸長するだろうと見込んでいたところ、新型コロナウイルスの感染が拡大。上形さんは「20年は1万2000〜1万5000件と予測を立てていましたが、3月に注文数がほぼゼロになり前年比95%減という状態になりました」と振り返る。

 しかし人が生きていく上で、食事の回数が減るわけではない。現状を悲観しつつもポジティブに捉え、社内で仮説や検証を繰り返していく中、「企業のオンライン飲み会はとかく準備が面倒だ」ということに気が付いた。

 「参加者がそれぞれ『UberEats』などで食事を頼み、その領収書を幹事が集めて精算するのが極めて煩わしいと思いました。そこに目を付けたのがnonpi foodboxの始まりです」(上形さん)

口コミや紹介で注文増加

 5月にnonpi foodboxの試験販売を始め、7月にビジネスモデル特許を出願後、8月にサービスを開始した。以降、受注数は右肩上がりで、大手を始め1000社以上の企業がnonpi foodboxを利用している。始めはケータリング事業で取引があった企業の利用が中心だったが、口コミや紹介で今では注文の約半分が新しい企業からだという。

 「12月は約800社の注文が入っています。10月1日のオンライン内定式で提供したいという注文が8月末から入るようになり、食数も累計2万食を超えました。1件当たり2〜3人分のこともあれば、1社から1500人分1500食のオーダーもあります」(上形さん)

 アラカルト9種やピンチョスと酒類がセットになったスタンダードプラン(3500円)が人気だが、接待に使えるスペシャルプラン(9000円)やデザートも付いた忘年会・新年会プラン(4500円)なども用意(記事執筆時点で忘年会プランは完売)。メニューは総料理長の飯野さんが決めている。

photo 接待に使えるスペシャルプランやデザートも付いた忘年会・新年会プランも(忘年会プランは完売)

 「ノンピの社員を6人くらいのチームに分け、オンライン飲みをしながら新しいプランを試食します。これはおいしいぞ、いけると感じたら全員参加のオンライン飲み会を開き、社員が皆食べるというフローを毎月行っています」(上形さん)

 これまでのケータリングビジネスの経験も生きた。ケータリングの食事は会話をしながら食べるもので会話を止めない、会話を弾ませるものが求められる。そのため一口で食べやすいメニューを作るが、オンライン飲み会でも同じだという。大きなものを食べるには飲み会中に大きく口を開けることになる。参加者がそうしたストレスを感じないようにメニューを構成している。

 上形さんによると、コロナ禍以外の社会背景も注文数の増加に起因しているという。「8月から12月までの間、72回オーダーしてくれたお客さまがいます。単に3密回避ではなく、情報漏えいやアルコールハラスメントなどのリスクが低いというメリットをオンライン飲み会に感じているそうです」と話す。

 またオンラインなら、家庭の事情で飲み会に参加できなかった社員が自宅から参加できるようになる。こうした企業のリスク回避や働き方の変化によって生まれたニーズに対応する、nonpi foodboxは時代にマッチしたサービスなのだ。

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