ついに「トランプ現象」に一つの終わりが近づいている。それで影響力がなくなるわけではなく、別のものに変わる可能性は高いが、過去10年間続いてきた「SNSとその影響力の時代」が結果として何をもたらしたのか、それが見えてきたように思う。今回はそのことを筆者なりに考察してみたい。
※本記事は2021年1月11日に公開されたものです。本件を取り巻く状況は急激に変化する可能性があります。
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年1月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。
1月6日に米国ワシントンDCで起きた連邦議会議事堂の襲撃事件は、われわれが思う以上に、アメリカ合衆国に住む人々に大きなインパクトを与えている。連邦議会議事堂は、アメリカという国の軸である民主主義の象徴そのものだ。それが「民主主義によって選ばれた大統領に扇動された人々によって襲撃された」のだから。
しかもその目的は、次期大統領選挙人投票結果の正式な集計と確認に対する示威行為だった。襲撃によって確認作業は翌日へと延期されている。
今回の事件において、各人がドナルド・トランプの政策を支持していたかどうか、その是非はこの際あまり関係ない。
ポイントは「大統領選挙に不正があったと信じている人々」がいて、それをトランプとその支持者が煽り、その結果として、トランプ支持派が警察の制止を振り切って議事堂内に乱入し、その際に死傷者まで出してしまったという点だ。
その過程でSNSが極めて大きな役割を果たしており、今後の情報拡散にも使われる可能性が高い。ドナルド・トランプとその関係者のSNSアカウントが相次いで凍結されたが、それは彼が公職から離れるのでやりやすくなった、というだけではない。
今回のポイントは、「アメリカの常識から考えて一線を超えてしまい、対処しないことがサービスにとって致命傷となる」と判断されたことだ。企業としてはそこに敏感に反応せざるを得ない。以前から問題は指摘されており、その段階で対処することもできただろう。この段階での対応は不公平であり、場当たり的なもの、ともいえる。本質的には、筆者は反対の立場をとる。
しかし、そうせざるを得ない空気感がアメリカには存在するのも、また事実である。
現地の報道を見ると「アメリカ合衆国憲法修正第25条適用を」という論調まであるほどだ。アメリカ合衆国憲法修正第25条とは、「大統領が職務執行不可能である」と判断された場合の対処についてのもの。政権移行までもうさほど日数は残っていないが、「短い間ですら危険性がある」「大統領としてあってはならない言動をした人物に職務遂行は不可能である」という主張である。
要は彼の言動が常軌を逸しており、職務執行ができる正常な状態ではない、とまで言っているわけだ。今回のことはテロないしはクーデターに近いと認識されているので、そうした意見が出るのも分かる。のんきな日本人から見れば、フィクションの中でしか出てこないと思っていた「憲法修正第25条」の文字がニュースに躍るのは、どこか現実感がない。
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