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コラム
» 2021年01月20日 07時00分 公開

約40万台の電動自転車が空き地に放置 ユーザーから“借金”も 中国シェアサイクルのトンデモ事情(1/2 ページ)

コロナ禍以降、中国の都市では電動自転車のシェアリングサービスが急拡大。数多く街を走っている。だが車両が増えすぎた影響で管理がずさんになり、中国湖南省の省都・長沙では、約40万台が空き地に放置されているという。こうした中国シェアサイクルの実情を、現地の事情に詳しいジャーナリストの山谷剛史氏がレポートする。

[山谷剛史,ITmedia]

 中国の都市では2020年以降、街の風景が目に見えて変化した。新型コロナウイルス感染拡大に伴って自転車での移動ニーズが増したことで、電動自転車のシェアリングサービス(以下、シェア電動サイクル)が急拡大。中国ではもともと、どこで乗り降りしてもいい非電動のシェアサイクルが盛んだったこともあり、今では電動自転車が数多く街を走っている。地面にペンキで線を引いた駐輪エリアも設けられ、車両が多数停められている。

photo 中国のシェア電動サイクル(=手前)とシェアサイクル(=奥)

 利用方法は提供元の企業によって異なるが、基本的には駐輪場で車両を選び、スマートフォンアプリで手続きするだけ。電動・非電動を問わず、公式アプリか微信(WeChat)内のミニアプリで自転車のQRコードをスキャンすれば利用できる。降車する時はロックをかければ終了だ。決済方法は、中国人や外国人在住者であれば、銀行口座とひもづいた支付宝(Alipay)や微信支付(WeChatPay)から利用料を引き落とせる。外国人渡航者であれば、WeChatのアカウントにクレジットカードをひもづけるのが一つの手だ。長々と書いたが、百聞は一見に如かず。機会があれば乗ってみてほしい。

約40万台の電動自転車が空き地に放置

 中国の調査会社iResearchによれば、19年に中国全土で100万台あったシェア電動サイクルは、20年に250万台まで増えたという。シェア電動サイクルの急速な広がりは利便性を高めた一方、マイナスの意味でも街の風景を変えており、中国で問題になっている。と言うのも、車両が増えすぎた影響で管理がずさんになり、中国湖南省の省都・長沙では、約40万台が計19万平方メートル(東京ドーム4個分)の空き地に放置されているという。

photo 長沙で回収された電動自転車(出典:中国中央電視台)

 19万平方メートルという数字は1か所の広さではなく、43カ所の空き地の面積を合計した数値だというが、膨大な車両が大量に放置されていることに変わりはない。その様子は中国メディアも報じており、空き地にぎっしりと自転車が並んでいる映像は圧巻だ。

 中国メディアによると、大量に放置されているシェア電動サイクルはユーザーに乗り捨てられたわけではなく、ナンバープレートを付ける目的などで業者などによって回収され、空き地に集められたという。

管理があいまいなまま、企業が車両を大量投入

 実は中国では、シェア電動サイクルが自転車と電動スクーターのどちらに該当するのか定義があいまいだ。中国の自治体は市民の電動スクーターにナンバープレートを付けて管理しているが、自転車のナンバープレート設置は義務付けていない。シェア電動サイクルを自治体として管理する仕組みが整っていないのだ。

 そうした中で、コロナ禍による需要の高まりを受け、多くの企業がシェアを獲得しようと膨大な車両を投入した。ひどいケースでは、電動スクーターに酷似したデザインのものを、自治体からおとがめがないことを理由にシェア電動サイクルとして貸し出している企業もあった。そして結局、増えすぎた車両を管理できなくなり、約40万台が空き地に集められた。報道によると、このうち6万5000台は、ひとまずナンバープレートを付けて街に戻されるが、残りは分解してバッテリーなどを外され、処分されるという。

 長沙市の「都市秩序管理所」の所長は、中国メディア「第一時間」の取材に「2019年末の時点で(長沙で)シェア電動サイクルが10万台あったが、2020年のピーク時には46万台まで増えた。空間に対してあまりに多いし、市民からも苦情が来ていた」と語っている。一時は、中国全土の約5分の1に当たる電動自転車がこの都市に集まり、飽和状態に陥っていたのだ。

救急車が通れない事態も

 電動自転車は他の問題も引き起こしている。長沙市などでは、ユーザーが返却した車両が駐輪場にあふれかえり、通行の妨げになっている。電動自転車は重く、通行人が車両を持ち運んでどかすのも一苦労。通常の自転車よりずっとハードなのだ。

photo 長沙で通行の妨げになっているシェアサイクル(出典:三湘都市報)

 歩道だけでなく、車道の邪魔になるケースもあり、救急車がシェア電動サイクルのせいで通行できない事態も発生している。前述の電動スクーター型の車両では、乗り慣れていないユーザーが2人乗りでスピードを出し、歩行者にぶつかって大腿骨骨折の大けがを負わせている。電動自転車が内蔵するバッテリーを狙った窃盗被害も報じられている。

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