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PCから“IBM”が外れるまで 「IBM PC」からただの「PC」へ”PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(1/3 ページ)

» 2021年01月21日 11時35分 公開
[大原雄介ITmedia]

 IBM PCの一族、という言い方も変だが「IBM Model 5150」の派生型及び後継機種は、1981年から1987年の5年間で、およそ500万台出荷された。ミリンド・M・レレ氏の“Creating Strategic Leverage”によれば、この7年間の出荷台数は表1のようになっている。

photo IBM PCと子どもたち
photo 表1:IBM PCシリーズの出荷台数

 これは多分に丸めた数字であるし、ここには「PCjr」が含まれていない(累積出荷台数は25万台という数字がWikipediaにある)から、これを加えれば500万台は超えている計算になるが、1987年が妙に尻すぼみになっている(さらにいえば1986年も前年割れしている)のが分かるかと思う。

 このうち1987年については理由は簡単で、4月にIBM PC系列の全製品の生産を終了したからだ。もちろん流通在庫があるから販売は5月以降も続いたが、売り上げに大きな影響を及ぼすほどではない。

 なんでこんな結果になったかといえば、1986年が落ち込んだ理由にもつながるのだが、1984年をピークにIBMのシェアが急速に落ち込んだからだ。表2の元データは“Total Share: Personal Computer Market Share 1975-2010”のものを使わせていただいたが、表1の出荷台数を、IBM PC+互換機全体の台数で割った、いわばIBMのマーケットシェアを求めたものだ。

photo 表2:IBM PCの市場占有率

 1983年が落ち込んでいるのはIBM PC/XTが期待外れだった(市場が80286搭載マシンを期待していたのに対し、8088の4.77MHzのままだった)ことへの失望もあるのだろうが、翌1984年は大きくリカバーしているから、ここまではまあ問題はない。問題は1985年以降、急速にAT互換機が市場に大量投入され、しかも性能的にIBM PC/ATより優れて価格が安いものが少なくなかったことに起因する(Compaqがその最右翼である)。

 IBM PC/XTは意外に健闘しているが、これは主に法人/政府機関向けに仕様が定められた(互換機メーカーが参入できなかった)マーケットをうまく取れたことに起因する。とはいえこのマーケットにも互換機が入り込んできており、それもあってIBM PCは急速に売り上げを落としている。

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