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デジタル備蓄のススメ EV活用「V2H」と大容量ポータブル電源とソーラーパネルとデジタル防災を始めよう(2/3 ページ)

» 2021年01月29日 20時02分 公開
[戸津弘貴ITmedia]

EVが被災地の電力支援で活躍

 2019年9月、台風15号の被害にあった千葉県では、広範囲で停電の被害が続いた。日産では台風上陸2日後の9月11日から停電地域での電力供給を行うため、EV「日産リーフ」53台を被災地に派遣。自治体や福祉施設に貸与し、これらは主に熱中症対策として扇風機の稼働、情報取得のための携帯電話の充電、夜間の給水作業用照明などの電源として活用された。

photo 千葉の台風被害でのEV活動状況

熊本豪雨での日産リーフによる被災地支援

photo パワームーバーの利用シーン。可搬型の変換装置「パワームーバー」を使用してEVから家庭用電源(100V)に変換。最大出力4500Wの電力を供給する

 日産ではブルー・スイッチ活動の一環で災害連携協定の締結を進めており、1月15日の時点で81の自治体と協定の締結を完了。「かつては協定締結まで個別のアプローチをして何度も説明や打ち合わせを重ねるなどハードルも高かったが、今では自治体側からオファーを受けることもあるなど認知が広がってきていると感じている」(高橋氏)と手応えを感じている。

V2HからV2Bへ 家からビルへ

 EVの活用は、戸建て住宅だけにとどまらない。タワーマンションなどでは、カーシェアやビル管理会社の社用車などでEVを採用し、普段は住民の足や社用車として活用される例や、災害時(停電)などでは、EVから電力を供給してエレベーターの非常電源の一部として活用するなど(自家発電と併用することで、発電用の燃料を節約できるなど)共用部の電力をサポートする(共助)取り組みが始まっている。

 EVの充給電コネクターは、日本国内で共通規格となっており、特定メーカーだけでなく各社のEV、PHV(プラグインハイブリッド自動車)でV2H、V2B(Vehicle to Building:ビークル・トゥ・ビルディング)の活用が期待できる。

 電気自動車というと、価格や(今まで乗り慣れた)エンジン車との違いなどの心理的障壁があって劇的な普及には至っていない。しかし、昨今の災害やカーボンニュートラル(脱炭素社会)の動きもあり、徐々に販売台数を伸ばしているという。

 価格の問題も、補助金などを活用すると同クラスのガソリン車と同等の価格で購入できるところまで来ており、今後の普及に期待したいところ。今は車種が限られているので、SUVやミニバンなどバリエーションが増えて、「EVを買う」のではなく「好きな車を選んだらEVだった」という状態になれば、ブレークスルーがあるかもしれない。

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