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デジタル備蓄のススメ EV活用「V2H」と大容量ポータブル電源とソーラーパネルとデジタル防災を始めよう(3/3 ページ)

» 2021年01月29日 20時02分 公開
[戸津弘貴ITmedia]
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集合住宅でのデジタル備蓄は?

 戸建てやビル(マンション)の共有部はV2H、V2Bで対策できるとしても、マンションやアパートなど集合住宅各戸の備えはどうしたら良いだろうか?

 電源ケーブルが引き込める高さ(2階など)であれば、状況が許せば自分のEVから電気を引き込むこともできなくはないが、多くの場合は現実的ではない。そうなると、各戸で自宅に必要な電力備蓄をしておく必要がある。夏場は特に冷蔵庫の保冷機能を維持したいだろうし、冬場であれば暖房はマスト。通年では電灯や電子レンジなどの調理器具を使用したいし、スマートフォンやPCを充電し、稼働させたいなど必要な電力は多い。

 電力が復旧するまでの間、家庭内の最低限の電力を賄える電力を蓄えたり、発電などで対応するにはどうすれば良いだろうか?

 内閣府による首都直下地震等による東京の被害想定によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガスで55日となっている。他のライフラインと比べて比較的早い復旧が見込まれる電気に関しては、災害発生から1週間程度しのげる備えをすれば良さそうだ。

大容量ポータブル電源とソーラーパネルの組み合わせで、持続的な電源環境を構築

 高層マンションなど窓を開けての換気ができない物件はもちろん、集合住宅においては規約で発電機などを置いて使用することができないところもある。そうでなくでも普段使い慣れない機器を使うのは事故につながる場合も多い。

 一方で、冷蔵庫やエアコンなど生活に必要な家電だけでなく、スマートフォンやパソコンなど電気を使う必需品も増えた現代生活には、電源の備えは必須といえる。近年大容量のリチウムイオンバッテリーを内蔵したポータブル電源が人気だが、出力や容量を適切なものを選ばないと、使いたい機器が動かない、容量が足りないという事態も起きかねない。

 アウトドアなどレジャー用で、値ごろ感もあり人気なのはおよそ定格出力300W〜500W(実売3万〜5万円程度)の機種が多いが、この場合、急速湯沸しポットや電子レンジなど高い出力を必要とする家電は動かせない。例えばティファールなどは1250W以上の電力を必要とするので定格出力1000Wクラスのポータブル電源でも動作しないことになる。スマートフォンやパソコンは充電できるけど、家にある家電が使えないという事態が起きやすいのだ。

 自宅に備える目的で、つなぐ機器をあれこれ気にしなくて使える目安は、定格出力1500W以上と言える。1500Wは家庭用配電盤のブレーカー1系統分ということもあり、これを単独で越える消費電力の機器はほぼないということと、コンセントにつながっているタップをそのままつなぎ替えて使える手軽さもあるからだ。

 例えば、GOAL ZEROのYETI1500X(30万円前後)は、電池容量1516Whのリチウムイオン電池を搭載し、定格出力2000Wのインバーターを内蔵。ピーク(サージ)電力は3500Wまで対応するなど余裕を持った仕様になっているので、電子レンジやティファール、ドライヤーなどの瞬間的に電力を使う電化製品を使用しても大丈夫(コンセント1系統分以上の電力容量がある)なのが嬉しい。

photo GOAL ZERO

 別売りのソーラーパネルと組み合わせると持続的な電力供給が行えるのもポイントだ。GOAL ZEROと100W出力のソーラーパネルBoulder 100 Briefcase(5万円前後)を組み合わせれば、上記のYETI1500X(電池容量1516Wh)を夏場の晴天時に半分チャージできる計算になる。

 災害時はどのバッテリーを何の用途に使うのかなど、運用面も重要になる。

 例えば大容量ポータブル電源は、冷蔵庫の維持やエアコンなど高出力家電のために確保しておき、ソーラーパネルで継ぎ足し充電を行いつつ、スマートフォンやPCなどは大容量のモバイルバッテリーで充電するといった具合だ。

photo 「cheero Power Mountain mini 30000mAh」最大60W出力で30000mAhの大容量バッテリーを内蔵。ノートPCからタブレット、スマートフォンまで家庭内のモバイル機器の充電に幅広く対応する

 バッテリーにAC100Vのコンセントがあったとしても、USBポートがあるならモバイル機器の充電はUSBポートから充電し、コンセントは家電用にするなど、DC-AC、AC-DCの変換ロスを減らす工夫も災害時などは特に重要になる。

 その他にも、普段はIHコンロでも、非常時の調理は用意しておいたカセットコンロをつかうなど、電力だけに頼らない備えをしておくことや、冷蔵庫の開け閉めを最小限に素早く行ったり、避難生活時は家族でもなるべく一つの部屋で過ごすことで冷暖房を集中的に使うなど、省エネを心掛けることも重要だ。

 いずれも普段から備えたり、心がけておけば万一の際も慌てずに避難生活に移ることができる。もちろん、想定以上のことが起こるのも災害なので、必ずしも思い描いた通りに進まないこともあるかもしれないが、前回解説した「マイタイムライン」を設定し、「いつも」と「もしも」を意識した生活をすることで、いざというとき、格段に負担が減らせるだろう。

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