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デジタル備蓄のススメ EV活用「V2H」と大容量ポータブル電源とソーラーパネルとデジタル防災を始めよう(1/3 ページ)

» 2021年01月29日 20時02分 公開
[戸津弘貴ITmedia]

 日本では地震や水害などさまざまな災害が毎年起きており、その被害は時に大規模なものになる。そこで考えなければならないのは“エネルギーのダイバーシティー”だ。

 “ガス管の損傷による火災などを防げる”災害に強い建物として、オール電化住宅は都市づくりに取り組まれてきたが、停電時には全ての設備が動かなくなる(家が無事であってもお湯は沸かせず、ドアロックも解除できない)という問題も発生している。

 大災害でなくとも、落雷による局地的な停電や、マンションの設備故障による全館停電事故や小規模停電は、より頻繁に生じる。リモートワークで自宅で仕事をする人が増えた状況では、停電が起きたら仕事どころではない。だから平時にエネルギーのダイバーシティーを考える必要がある、というわけだ。

V2Hが実現する、持続可能性の高い生活

 1月初旬の大雪では全国的に電力需要が逼迫し、節電の呼びかけが行われるまでになった。夏季においても猛暑で電力需要は高止まりのままだ。これに対し、需要が低く電力が安い時間帯に蓄電したりお湯を沸かすなど電力を消費する作業を行い、高需要時間帯にはバッテリーや給湯器に蓄えたものを使用するピークカットの動きが事業所や家庭で見られる。

 この動きを加速させる仕組みが、EVを活用した(Vehicle to Home:ビークル・トゥ・ホーム)だ。

 日産自動車は、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」と銘打った活動を展開している。「いつもともしも」をテーマに、観光、環境、過疎、エネルギーマネジメント、災害対策など日本が抱える課題を電気自動車で解決する取り組みを行っており、V2Hもその中に含まれている。今回は、同社の日本事業広報渉外部主管、ブルー・スイッチ活動をリードしている高橋雄一郎氏に話を伺った。

photo V2Hのイメージ図:EV(電気自動車)は、パワーコンディショナーを介して商用電源やソーラー発電から充電したり、EVから電力を供給したりする。電気が余っているときはEVへ充電し、不足する時にはEVから供給する仕組みがV2Hだ。上記は停電時のイメージ

 都心部では車を使うのは週末だけという人も多いが、ただ駐車場に停めておくだけではもったいない。電気自動車は、ソーラー発電の余剰電力や安価な深夜電力を貯めておく大きな蓄電池として機能し、充電した電力で消費の多い時間帯の電力を賄うことでピークカットに貢献できる。日産では、災害時や停電などの非常時には電気自動車から電力供給すれば家族が4日ほど過ごせる電力を供給できるとしている。

 自治体によっては、電気自動車メーカーや自家用車として電気自動車を購入した住人と提携し、非常時の電力として対策本部や避難所などで活用する取り組みも行われている。

 練馬区では公用車に日産のEV(電気自動車)を導入。安全・安心パトロールカーとして使用し、災害時は避難所や災害対策本部へ電源供給する。EVを所有する区民を対象に、災害時にEVを避難所に提供する災害時協力登録車制度も構築している。

 さらに、区内にある日産販売店のEV試乗車を災害時に貸与し、非常電源として活用する協定も結んでいる。この協定では、災害時には販売店に設置されている急速充電スタンドを利用できるなど、EVの共助、公助としての活用が進んでいる。

photo 練馬区の取り組み
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