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» 2021年01月30日 10時00分 公開

社内リソースにこだわらない──開発2週間で公開したヤフー「混雑予想」誕生秘話(1/2 ページ)

ヤフーが6月に公開した、建物ごとの混雑情報を地図上で視覚的に表示する「混雑予報」。この混雑予想機能は、開発開始からわずか2週間で公開までこぎつけたという。開発チームが混雑予報機能の開発秘話を明かした。

[石井徹,ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るった2020年。ヤフーは建物ごとの混雑情報を地図上で視覚的に表示する「混雑予報」を6月に公開した。

 これはスマホ版の「Yahoo!検索」「Yahoo! MAP」で検索したスポットの、1時間ごとの混雑具合を表示するサービスだ。

 この混雑予想機能は、開発開始からわずか2週間で公開までこぎつけたという。さらに1カ月で自社の独自の混雑分析モデルを開発しサービスへ実装するという、異例の開発体制が取られた。

 同社が1月22日にオンライン開催したイベント「Yahoo! JAPAN Tech Conference」の中で、開発チームが混雑予報機能の開発秘話を明かした。

混雑予報機能の開発秘話がオンラインイベントで語られた
Yahoo!乗換案内の「混雑予報」機能

2週間で公開を実現できた3つの要因

 コロナ禍となってからは感染拡大を防ぐため、密集・密閉・密接の「三密」防止が盛んに呼び掛けられている。満員電車やイベントの混雑を避けたいというニーズはコロナ禍以前にもあったが、感染症の流行に直面したことでより重要性が増している。

廣川将成さん(検索統括本部 プロダクション1本部)

 Yahoo!検索の開発チームリーダーを務める廣川将成さんは「安心して移動するための不安や悩みごとの解決が急務だった」と開発の背景を明かす。機能の分かりやすさ、使いやすさとともに「できるだけ早く届けること」も重要だと考えていたという。

 混雑予報の提供のため、ヤフーは全社組織としてタスクフォースを結成。2段階で開発する体制を整えた。同社はコロナ禍で全社リモートワークの体制を敷いているため、この開発のためのやりとりは全てオンラインで行われた。

 5月18日の開発スタートから2週間を「フェーズ1」と設定した。混雑情報のデータセットを持つパートナーと連携し、早期にサービスとして提供できる形を整えた。並行して、5月18日から6月30日の1カ月半を「フェーズ2」と位置付け、自社データも活用した混雑予報の提供を目指した。

 Yahoo! JAPANでは混雑情報を自社でも収集しているが、混雑予報の初期リリース時点では、あえて他社の混雑情報データとの連携を選択。これは「できるだけ早く届ける」という目標達成を重視したためだったという。

 廣川さんはスムーズな公開を実現した要因として、以下の3つを挙げた。

(1)社内リソースにこだわらない姿勢

(2)API化による関係者間の役割分担の明確化

(3)開発初期からUI/UXの統一を意識

 初期リリース後、追加の2週間(開発開始から1カ月目)で、自社データを基に混雑情報をモデル化して表示する機能を実装。その後はアプリとWebで分かれていたUIを統一し、Yahoo! JAPANの各サービスへと横展開を進めている。

短い期間で精度の高い混雑予報を作れた背景

 「混雑予報」の使い方は誰が見ても分かるほどにシンプルだ。ただし、精度の高い推測を行うのは容易ではなかったという。位置情報データを専門とするエンジニアの佐藤潤一さんは、混雑予報モデル作成のコツを明かした。

佐藤潤一さん(検索統括本部 検索プラットフォーム開発本部)

 ヤフーは、スマホの位置情報データから混雑度を類推してヒートマップを表示する「混雑レーダー」という機能を以前にも開発していた。混雑予報ではこのデータが、地点ごとの混雑情報を予測する基盤となっている。

Yahoo! MAPの混雑レーダー機能

 同社はスマホアプリの提供時、許諾を得たユーザーから位置情報データなどを個人を特定できない形で収集している。ただし、スマホアプリから得られる位置情報データは、すぐに活用できるものではない。OSやAPIのバージョンにより取得できる内容は変わり、位置情報の権限設定によっても得られるデータにばらつきがあるからだ。アプリを利用しているユーザーが特定のスポットに偏るなど、日ごとのデータのばらつきもある。

 こうしたデータから混雑具合を予想するため、まずはユーザーごとの移動の軌跡を個人を特定しない形で予測している。多数の軌跡を重ね合わせると、地図上で混雑している場所を推定できるという仕組みだ。

位置情報データから個人を特定しない形で軌跡を求め、大量のデータを重ね合わせて混雑データを求めている

 混雑レーダーはヒートマップ形式で混雑の情報を表示する仕組みだが、エリアによっては混雑を推定する範囲を広めに設定する必要がある。例えば住宅地で狭めの範囲で設定すると、地域住民の帰宅を混雑と誤認識してしまうことがあるからだ。

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