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「Zoom疲れ」の4つの原因と対策をスタンフォード大が紹介

» 2021年03月01日 09時28分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米スタンフォード大学のVirtual Human Interaction Lab(VHIL)は2月23日(現地時間)、「Nonverbal Overload: A Theoretical Argument for the Causes of Zoom Fatigue(非言語的過負荷:ズーム疲れの原因に関する理論的議論)」と題する論文を学術誌「Technology, Mind and Behavior」に掲載したと発表した。Zoomに代表されるWeb会議を長時間使うことの心理的影響とその対処法を紹介している。

 zoom

 同ラボのジェレミー・ベイレンソン教授は、この論文はWeb会議プラットフォームを非難するためではなく、プラットフォームにUIの改善を、ユーザーに疲労軽減方法を、それぞれ提案するのが目的だと語った。

 ベイレンソン教授による4つの原因とその対策は次の通り。

視線の多さと顔サイズの大きさ

 リアルな会議では、参加者はメモを取るために下を向いたりよそ見したりするが、Zoomでは誰もが常に全員を見ている。一度も話さない参加者も話し手と同等に扱われ、自分に向けられているように見える視線の量が劇的に増える。多数の人に見つめられることは、人間にとって恐怖の原因という。

 zoom 2 常に大勢に見られているように感じる画面

 また、ディスプレイのサイズによっては人の顔が大きく表示され、リアルな会議より他の参加者が近くに感じられる。脳は、相手の顔が非常に近いとそれを交尾か攻撃につながる状況と解釈し、不要な興奮状態に陥る。

解決策

 Zoomなどのプラットフォーム側がインタフェースを変更するまでは、ユーザーは全画面表示をやめ、ウィンドウサイズを小さくすることで会議参加者の顔の表示を小さくし、ディスプレイから離れて参加者の顔から距離を置けるよう外付けキーボードを使う。

自分自身を見続けること

 Web会議で自分の顔を見続けるのは現実世界で鏡を見ながら人と会話するのと同じだとベイレンソン教授は指摘する。ある研究では、自分を見ていると、自分に対してより批判的になる傾向があるという結果が出たという。

解決策

 プラットフォームは初期設定で自分を非表示にする方がいい。プラットフォームがUIを変更するまでは、ユーザーは「セルフビューを非表示」に設定する(Zoomの場合)ことを勧めている。この設定にしておくと、他の参加者は自分の顔を表示していても、自分のディスプレイには自分の顔が表示されない。

移動できないこと

 実際の会議や音声通話による会議であれば、参加者は移動したり歩き回ることもできるが、Web会議ではカメラの前に留まる必要がある。これは人間にとって不自然な制限という。

解決策

 Web会議を行う部屋やカメラの位置、外付けキーボードなどで参加方法を考慮する。例えば、ディスプレイから離れた位置に外付けカメラを設置するなど。また、会議中に定期的に動画をオフにする基本ルールを作ると、休息できる。

大げさなジェスチャーの必要性

 対面での会話で非言語的コミュニケーション(身振りや表情など)が果たす役割は大きい。Web会議では同じ効果を出すために大げさにうなずいたり、親指を立てて見せたりしなければならない。そのため精神的なカロリーを多く消費し、認知的負荷が増える。

対策

 長時間のWeb会議の場合は「音声のみ」タイムを設ける。数分間でも大げさな身振りをしなくて済む時間を作れば休まる。



 ベイレンソン教授は、Web会議自体は高く評価しており、リアルな会議でも会議は疲れるものだし、Zoom疲れの原因の1つは、(手軽に開催できるだけに)リアルよりも多くのWeb会議に参加するようになっていることだろうとしている。(ポストコロナで)リアルな会議が再び安全に行えるようになっても、Web会議が通勤に置き換わる可能性がある。「われわれの仕事は、このメディアをさらに研究し、プラットフォームがより優れたUIを構築し、ユーザーがより優れた使い方を習得できるようにすることだ」(ベイレンソン教授)

 論文はWebサイトで読むことができる。

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