ITの活用でリアル以上に効果的なオンライン教育ができるのではないか――新型コロナの感染拡大から約1年、学校で行う対面授業の代替手段としてオンライン授業を取り入れてきた大学が、さらなるITの積極活用に向けて動いている。立教大学(東京都豊島区)は3月3日、NECネッツエスアイ(東京都文京区)と、教育の質の向上や学生支援などに向け、クラウドやVRの技術などを活用する研究を4月に始めると発表した。
コロナ禍で外出自粛が求められる中で、立教大学も感染症対策のためオンライン授業を導入した。コロナ禍以前は、実際に教室に集まって授業するのが当たり前だったが、今は学生は楽しみにしていたキャンパスライフが制限され、研究も停滞するなど、さまざまな場面で影響が出ている。
同大の山口和範経営学部長は3月3日の発表会で「(以前は)学生の様子を見て、必要に応じて声がけをしていた。なんとなく沈んだ雰囲気の学生がいれば『どうしたの』と声がけできた。オンラインではできなくなっている」など、学生支援の面でも難しさがあると話した。
立教大学とNECネッツエスアイは2021年4月から24年3月までの3年間、共同研究を通じて「学びの場に最適な技術の活用法」「オンライン教育が持つ付加価値」「クラウドを活用したデータ分析による教育の質向上」などを探る。
具体的には、クラウドを活用したオンライン講義配信システムの機能強化、VR空間内で学生が交流できる「バーチャルキャンパス」の構築などだ。
オンライン講義の録画配信システムには内容の検索や索引などの機能を追加して利便性向上を図る。加えて、学生が動画のどこで一時停止や巻き戻しを行ったかなどのデータを収集し、授業の質の向上などにつなげる研究も行う。
特にNECネッツエスアイが「ぜひ実現したい」と意気込むのがバーチャルキャンパスだ。VR空間に講義室やプレゼンテーションルームなどを構築。教職員や学生がVRヘッドセットをかぶってログインすると、VR空間でコミュニケーションができる仕組みだ。Web会議ツールを使ったオンライン講義に比べ、臨場感のあるやりとりができるとしている。
プレゼンテーションルームでは、VR空間に資料や3Dモデルをアップロードして発表ができる。Web会議ツールを使った場合は「聞いている人の反応が分からない」という不安の声があったが、VR空間では参加者から拍手などのリアクションを受けられるため、一体感のあるプレゼンができるという。
他にも、海外の大学の様子を360度画映像して投影しながら、現地の学生と交流する「バーチャル留学」や、VR空間に企業のオフィスを再現して会社の雰囲気を体験する「オンライン就職活動」なども計画している。
山口学部長は「今後どんな社会情勢になっても、大学が持つ機能を十分に発揮できるようにするのが、NECネッツエスアイとの共同研究の最大の目的だ」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR