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「鬼滅」「巣ごもり」でコミック市場規模は史上最高に 電子版好調の内実を分析する(1/3 ページ)

» 2021年03月04日 08時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 2月25日、公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所は、2020年の国内コミック市場規模を発表した。状況は「超好調」だ。紙と電子を合わせたコミック市場規模(推定販売金額)は6126億円。同社の統計開始(1978年)以来最高の規模となり、コミック市場の最盛期といわれた1995年を超えた。

photo 公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所が2月25日に公開したプレスリリースより引用。額が初めて6000億円を超えた

 前年に比して大きな伸びとなった理由はいくつも思い浮かぶ。いわゆる巣ごもり需要で電子書籍が伸びたこと、「鬼滅の刃」などのヒットコミックが多くあったことなどの複合効果と考えられる。

 では、デジタルデータでのコンテンツ流通という面で、この結果はどういう意味を持っているのか。今後必要なことも含め、少し考察してみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年3月1日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)も3月からスタート。

電子書籍コミック市場は着実に成長

 2020年のコミック市場の特徴は、「雑誌が減った一方で、紙のコミックも電子書籍コミックも増えた」という形だ。

 全国出版協会の推定によれば、コミック雑誌の推定販売金額は627億円で前年比13.2%減。一方、紙のコミックは前年比23.9%増の2079億円と推定されている。それに対して電子書籍コミックは前年比31.9%増の3420億円となっている。全国出版協会の統計では、2019年に雑誌+コミックの紙による市場を電子書籍が抜いているのだが、2020年にはその傾向がより明確になった。

 さらに紙だけにフォーカスしても、紙のコミックが伸びたのは2019年と20年だけ。それまではずっと下がり続けてきた。コミック市場が急激に上向く構造変化は存在せず、2019年・20年と「鬼滅の刃」を含むヒット作が多く、それが紙のコミックの好調につながっていると考えた方がいいだろう。

photo 同じく公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所が2月25日に公開したプレスリリースより引用。2020年に紙のコミックが急激に持ち直したように見えるが、雑誌はずっと右肩下り。2018年までは紙のコミックも下がり続けていた

 一方、電子コミックは2014年以降ずっと成長し続けている。2016年から18年にかけては年率15%程度と伸びが小さくなったものの、それ以外の年は25%から30%の伸びを続けている。

 2020年の予測値は32%弱の伸び。これを「巣ごもり需要の結果」というのは簡単だが、過去の実績を見ると、「着実な成長を巣ごもり需要が後押しした」と考えるのが適切だろう。2021年にどこまで伸びるかは分からないが、いきなりマイナス成長になるとは考えづらい。

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