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「鬼滅」「巣ごもり」でコミック市場規模は史上最高に 電子版好調の内実を分析する(2/3 ページ)

» 2021年03月04日 08時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 なお、伸びが小さかった2016年から2018年は、海賊版コミックサイトである「漫画村」が問題になっていた時期でもある。「漫画村」などの海賊版コミックサイトだけで伸びが鈍化した、と明確に結論付けるだけの情報はないものの、参考情報として付記しておく。

電子コミック市場は「単行本」と「単話型」で分断されている

 一方、電子書籍コミックの市場を考える場合、単純に「電子書籍としてのコミックが売れた」とだけ考えるのはシンプルすぎる。電子書籍としてのコミック市場は、いくつかの形に分かれているからである。

 具体的には「紙のコミック同様、単行本としての電子書籍コミック」「アプリを介した単話での電子書籍コミック閲覧」「アプリやWebを介した、単話を中心とした広告収入型の電子書籍コミック閲覧」の3つである。要は、「ストアで単行本を売るタイプのビジネス」と「アプリで1話ずつ読ませるタイプのビジネス」の両方があり、特に後者の場合には、課金型と広告型があると考えればいいだろう。もちろん、アプリの中で全てが共存しているストアもあるわけだが。

 全国出版協会には広告ベースでのビジネスが含まれていない。電子書籍コミックのビジネスは、実際にはもう少し大きな規模であると推定できる。

 ではどのくらい上乗せされるべきなのか?

 あくまで参考としてだが、2020年にインプレス総合研究所より発行された「電子書籍ビジネス調査報告書2020」から引用したデータをご紹介する。なお、全国出版協会の調査とは手法などが異なるため、数字を直接的に混同して使うことはできないので、その点を留意してほしい。

 電子書籍ビジネス調査報告書2020によれば、マンガアプリによる広告市場は2019年度で210億円。2020年度予測値は270億円となっていた。同調査での、2019年度の電子書籍コミック市場は2989億円なので、7%程度が広告によるビジネスということになる。小さいように見えるが、年率30%で成長しており勢いはある。

photo インプレス総合研究所より発行された「電子書籍ビジネス調査報告書2020」概要より引用。広告による電子書籍コミックの市場規模

 もう一つ面白いデータを引用しよう。電子書籍を読む場合、無料と有料どちらを使っているかという調査だ。消費者全体での「有料利用者」は着実に増えているが、一方で「無料利用者」は非常に安定的な数になっていることも分かるだろう。

photo 同じく、インプレス総合研究所より発行された「電子書籍ビジネス調査報告書2020」概要より引用。消費者全体のうち、有料の電子書籍(濃い色)と無料での利用者(薄い色)をまとめたもの

 無料での利用者が多い割に広告収入が小さいということは、電子書籍における広告単価がまだまだ小さい、ということを示しており、額が上がっているのは「頻度・量が上がっている」と想定できる。

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