このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
仏Ubisoftと米コンコーディア大学による研究チームが開発した「Learned Motion Matching」は、ゲーム内キャラクターアニメーションのための深層学習モデルだ。自然なキャラクターアニメーション生成の計算コストを大幅に削減できるという。
従来のモーションキャプチャーデータから場面に適したキャラクターの歩行や走行を行う手法「モーションマッチング」は、柔軟性や前処理時間の短さ、視覚的な品質などで人気が高い。しかし、処理するための負荷や計算コストも大きいのが難点の、ある意味“力技”だ。
今回は、モーションマッチングの良さを維持しつつ、深層学習によってメモリ使用量の削減を目指す。モーションマッチングによる柔軟な動きと、深層学習による低コストを統合した効率的な手法だ。
この手法は、2足/4足歩行キャラクター、他のキャラクター/物体との相互作用に有効で、凸凹の多い地形での歩行、椅子に座る、他人とぶつかるといった相互作用もスムーズにこなす。手をたたく、歩くといった別のアニメーションを同時に実行することもできる。計算コストが低い分、多様なモーションも実行可能になるので、キャラクターの動きにバリエーションが増える利点もある。
モデルは主要な3つの深層学習ネットワークで構築されており、単独で使用することも、時間、メモリ、品質要件に応じてさまざまな組み合わせで使うことも可能だ。
学習したモデルにより、メモリ使用量を10倍効率的し、ニューラルネットワークデータの圧縮を含めると70倍の効率化に成功したという。これにより、複雑なデータを必要とするキャラクターアニメーションの制作予算を抑えることが可能だとしている。
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