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机や太ももの上でキーボードなしタイピング 指輪型「TelemetRing」、東大とMicrosoftが開発Innovative Tech

» 2021年04月09日 09時34分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学と米Microsoftの研究チームが開発した「TelemetRing」は、指輪のように装着し、キーボードなしにタイピングが行えるバッテリー不要のリング型無線ウェアラブルデバイスだ。テーブルや太ももなどをたたくようにタイピングして入力できる。

photo プロトタイプの外観

 デバイスは5本の指に装着するリング型コイルと、その動きを読み取るリストバンド型コイルで構成。装着した指を机や膝の上で叩いた時の衝撃を検出し、どの指かを分類する。

 たたくことで発生する衝撃振動により、装着したリングのインピーダンス(電圧と電流の差)が変化し、そのインピーダンスの変化が磁界結合(2つのコイル間でワイヤレス伝送する仕組み)を介してリストバンドに伝わり、測定システムの信号処理によりタイピングを識別する。

photo 5本の指に装着したリング型コイルの動きをリストバンド型コイルが読み取る

 5つのリングはそれぞれ異なる共振周波数が設定されているため、どの指がタイピングされたかが区別できる。たたいた指の組み合わせによって文字やコマンドを表現する。例えば、中指と小指で同時にたたくと“U”、人差し指と薬指で同時にたたくと“I”、親指の次に人差し指でたたくと“S”、中指だけでたたくと“T”、というように1文字ずつ入力が行える。

photo (a) []内の数字はたたく順番(.はタイプなし)、左から親指、人差し指、中指、薬指、小指を示す。表示されている[121.2]の場合だと、親指と中指が最初に同時タイプされ、次に人差し指と小指が同時タイプされている。これで1文字入力(b)「UIST」と一文字ずつタイプした検出例

 課題は、リングとリストバンド間の磁界結合が弱く、インピーダンスの変化が小さくなる現象だった。研究チームは微弱な磁界結合でもインピーダンスの変化を正確に読み取るシステムを開発し、この課題に取り組んだ。

 その結果、異なる周波数で5つの高感度チャンネルを構成し、タイピングの検出とタイピングされた指の分類を同時に実現。タイピング認識率を評価した実験では、89.7%の認識精度を報告しその有効性を示したとしている。

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