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TSUTAYAとメルカリの“新刊は意外と高く売れる”POPで炎上、その真意とは? 運営元のCCCに聞いた(1/2 ページ)

» 2021年04月28日 18時35分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 「新刊本はメルカリで意外と高く売れる」――TSUTAYA店内に掲示されたPOPを巡り、「転売を推奨している」などの批判がTwitterで相次いでいる。客がTSUTAYA店舗で購入した新刊本をメルカリに出品することで、商品の循環を促す試験的なサービスとしていたが、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とメルカリは配慮が欠けた表現があったとして、4月28日付でサービスを中止した。

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 このサービスはPOPに記載されたQRコードを読み取り、専用サイトの「TSUTAYAで3秒チェッカー」を使うことで、メルカリにおける新刊本の取引価格が分かるというもの。出版市場が縮小する中、書店での新刊本の売り上げアップを目的に、TSUTAYAの直営店約100店舗中、西五反田店や桜新町店、赤坂店、横浜みなとみらい店など9店舗を対象にした4月13日から5月9日までの期間限定キャンペーンだった。

photo 「TSUTAYAで3秒チェッカー」

「二次流通で利益を得るのは出品者とプラットフォームのみ」

 Twitterを中心にネット上では転売推奨の疑いに対する批判に加え、「作家への敬意を欠いている」「万引きを助長している」など批判の声が多く上がったが、CCCによると、このサービスの真の目的は別のところにあるという。

 それは出版業界での「二次流通」の課題解決だ。近年は新刊本をECサイトで購入する利用者が増加しており、それに伴い中古本をネットで出品する利用者も増加している。「利用者が新刊本を購入することで、購入した書店や出版社、著者に利益が還元される『一次流通』とは異なり、二次流通である中古本の場合、利益を得るのは出品者とプラットフォームのみで、作り手側に還元されない仕組みになっている」とCCC。

 実際、出版業界の現状は厳しい。全国出版協会・出版科学研究所の統計によると、2020年の出版物の売上高は1兆6168億円。1996年をピークに市場規模が年々縮小している。書店数も20年間で右肩下がりで、地方を中心に1日に2店舗のペースで書店が閉店しているという。書店がない地域も出てくる中、Webでの本の中古売買は好調が続いている。

 「現在の状況は出版社や著者、書店にとっても脅威である一方、顧客価値が高く、仮に書店が反対しても、利用者の需要が高まることを抑えることはできない。しかしながら、書店として文化を継承し続け、紙の本の読者を増やすためにも、利用者の動向を調査し、新しいエコシステムとして業界全体が利益を得る出版サイクルに組み入れることを企画する必要がある」(CCCの担当者)

 そう考えたCCCが話を持ち掛けたのが、循環型社会の構築という理念を掲げるメルカリだった。書店での新刊本の売り上げが減少する中、出版業界の課題をメルカリと連携することで循環のサイクルを構築しようという構想の下、2020年9月からプロジェクトが始まった。実証実験を踏まえ、長期的な視野で二次流通でも出版社や書店、著者が利益を享受できる仕組みを共同で検討するという狙いもあった。

photo TSUTAYAとメルカリの循環のイメージ
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