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日本でも広がり始めた「フェムテック」 女性が抱える健康課題にテクノロジーで取り組むルナルナに聞いた(前編)(2/3 ページ)

» 2021年04月30日 20時55分 公開
[旦木瑞穂ITmedia]

「ルナルナ」リリースに立ちはだかるタブーの壁

 「コンテンツ自体の開発よりも、広告を打ち、普及させることに大変苦労しました。市場調査を行った上で、短期的に広告を打ち、一気に『生理管理サービスと言えばルナルナ』というところまで認知を高める戦略立てましたが、『生理』というワードを公共の電波に乗せていいものか?というところから議論が進まず、なかなか審査が通りませんでした」と話すのは、エムティーアイの那須理紗さん(ヘルスケア事業本部 ルナルナ事業統括部 ルナルナ事業部 副事業部長)

photo エムティーアイの那須理紗さん

 それもそのはず。女性特有の健康問題、とりわけ月経については、古今東西を問わず、ほとんど全ての国や民族に、因習、迷信、タブーがあったといっても大げさではないからだ。

 人類は1万年以上も前から、月経を神聖なものとする一方で、畏怖すべき対象で不可解なものとして扱っていた。月経血が毒とされ、触れることさえ忌避する社会や、月経中の女性を隔離し、目にしただけで災いが降りかかると信じて恐れ、それを言葉にすることさえままならない時代もあった。中世のヨーロッパで行われていた魔女狩りが、月経について科学的・医学的な研究が遅れた背景ともいわれている。

 欧米を中心に、月経にまつわるさまざまな現象についての研究が進められ、有史以来、伝承されてきた女性や月経に対する俗説や迷信、それらがまとう神秘性・魔力性が払拭され始めたのは、20世紀半ばになってからのことだった。

 インターネットの誕生と普及も、これまでタブー視されてきた女性特有の健康問題を解決する追い風となった。アドテク(広告×テクノロジー)、フィンテック(金融×テクノロジー)、アグリテック(農業×テクノロジー)など、ITはさまざまな分野の社会的課題を解決に導く有効なアイテムとなり、フェムテック市場は、2025年には5兆円規模への成長が期待されている。

 とはいえ、長い歴史の中で培われてきた人々の意識は、そうやすやすと変えられるものではなく、先進国の間でも、経済的・政治的分野でのジェンダーギャップは根深い。だが、「女性の声がくみ取られやすい社会へ変革している」ということを感じている人は確実に増えている。

 「ルナルナ」は、まさに日本のフェムテックの先駆けだった。

 同社は、『月経』を扱う前例のないサービスだからこそ、分かりやすくユーザーに伝えるために、広告にはダイレクトな言葉を選択したが、テレビコマーシャルの審査員からは、「性的だ」「直接的すぎる」と指摘され、ぼかした表現に修正せざるを得なかった。

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