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テレワークはどこまで定着するのか 問われる日本企業の「本気度」ウィズコロナ時代のテクノロジー(3/4 ページ)

» 2021年04月30日 21時43分 公開
[小林啓倫ITmedia]

具現化するテレワークのメリット

 先ほど「テレワークは単に、関連システムやハードウェア、ソフトウェアを導入すれば明日から開始できるというものではない」と書いたが、そうしたIT技術の面だけでも、さまざまなマイナス面がある。単純にこれらを用意する予算がかかり、そのお守や、従業員からの問い合わせやトラブルに対応するスタッフも配置しなければならない。またテレワークのシステムを対象とした犯罪行為も増加しており、多くの組織や専門家が、テレワーク推進によって、サイバーセキュリティに関するリスクが上昇中であると警告している。

 それでも企業がテレワークに取り組むのは、それが具体的なメリットを生み出しているからだ。中でも多くのテレワーク実施企業が認めているのが、生産性の向上である。

 生産性とテレワークの関係については、逆にマイナス面が大きいと考えるのが一般的だろう。例えば先ほど紹介したレポート「テレワークの労務管理等に関する実態調査」においても、「テレワークを導入・実施していない理由」としてテレワーク非実施企業が挙げている理由の中、「オフィス勤務と比べて、時間当たり生産性の低下が懸念されるから(6.1%)」「業務の進捗確認が難しいから(6.1%)」、あるいは「コミュニケーションが取りづらくなることが懸念されるから(6.6%)」などが存在している。

 もちろん業務の進捗確認やコミュニケーションなどは、非対面になればそれだけ難しさは増す。しかしそれらはさまざまな工夫によって乗り越えられるものであり、テレワークを実際に行っている労働者からは、それ以外の要因によってテレワークが生産性の向上に役立っているとの声が上がっている。

 例えばこれも先ほど紹介したレポート「Global Work From Home Experience Survey」では、実際にテレワークしている人々に対して、仕事中に「気が散ったり、邪魔が入ったりするのを防ぐ」ことについて尋ねたところ、オフィスにいたとき満足にできていたと回答したのは40%、一方で在宅勤務において満足にできていると回答したのは72%だった。また「長時間集中力を保つ」ことについても、オフィスでできていたのは51%だったのに対し、在宅では80%となっている。さらに、多くの人々が「オフィスで多くの人々と交流した方が良い」理由として挙げている、「クリエイティブな、あるいは創造的な思考をする」ことについても、オフィスでできていたのは63%、在宅でできていると答えたのは80%となっている。

 アンケート調査であるだけに主観的な評価になっている可能性も否めないが、仮に回答通りであるとすれば、テレワークは一般的な作業における生産性を上げるだけでなく、新たなアイデアや意見を生むという点でもメリットが期待できるといえるだろう。

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