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テレワークはどこまで定着するのか 問われる日本企業の「本気度」ウィズコロナ時代のテクノロジー(4/4 ページ)

» 2021年04月30日 21時43分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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日本と海外のギャップが広がる懸念

 一方、コンサルティング会社のマッキンゼーは、コロナ後の働き方を予測したレポート「The future of work after COVID-19」の中で、テレワークは「パンデミックの発生前、家族やその他の理由から、人材や資本、チャンスが集中する“スーパースター都市”に転居できなかった労働者を企業が利用し、多様性を拡大する機会を提供する」と指摘している。

 実際にテレワークの浸透によって、介護などの理由から特定の場所でしか働けなかった人材が、物理的な制約を超えて働けるようになったり、プライベートの生活が大きく変化しても仕事を続けられるようになったりすることが期待されている。

 また日本のパーソルキャリアが行ったアンケート調査では、転職先を検討する際の条件として、テレワークが重要と回答した人が5割を超えるという結果が出ており、今後優秀な人材を確保するためにテレワークの存在が重要になる可能性が高い。

 さらにマッキンゼーのレポートでは、企業がテレワークの導入を進める中で、1つのポジション全体をリモート化するのではなく、タスク単位で「どれがリモート化できるのか」という細かい分析を行うようになることを指摘している。これまで1人の人間が担当していた仕事だからといって、コロナ後の新しい環境において、そのまま切り出して誰かに担当してもらう必要はない。例えばリモート会議の議事録を(その会議にオンライン参加する、あるいは音声データを受け取るなどして)作成するといった作業は、セキュリティ面の問題がクリアされれば、在宅勤務者に任せることが可能だろう。

 そうした見直しは、一種のBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング、既存業務の抜本的な見直し)として機能して、単なる業務のリモート化を超えた改善効果を企業にもたらすと期待される。

 さらにリモート用にタスク単位で切り出された作業を、RPAやAIが担当するという可能性も考えられるだろう。実際に先ほどの議事録作成などは、人間並みの文字起こしや要約を行うAIが研究・商用化されつつある。テレワークは感染症対策という枠を大きく超えて、業務のデジタル化、流行(はや)りの言葉で言えば「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)の観点からも検討すべきテーマというわけだ。

 今回は各種調査を基に、テレワークに対する企業の姿勢を確認してきたが、懸念されるのは日本と海外のギャップが広がることだ。もちろん外国企業の取り組みが全て正しいわけではなく、日本企業の中で優れた施策を進めているところも多い。しかし海外の企業がテレワークを前提とした業務の在り方を設計・実現し、それによって優秀な人材の確保や、新たな業務形態の導入を進めるのであれば、それは明確な優位性として彼らにリターンをもたらすだろう。

 コロナ対策という観点だけでなく、企業の競争力という本来の理由からも、テレワーク定着の議論が行われることを願いたい。

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