女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指す「フェムテック」。女性向けアプリ「ルナルナ」を提供しているエムティーアイは、日本のフェムテック企業の代表的な存在だ。エムティーアイの那須理紗さん(ヘルスケア事業本部 ルナルナ事業統括部 ルナルナ事業部 副事業部長)へのインタビュー後編では、同社が20年かけて収集したデータを基に、どのようなことをやろうとしているのかを探る。
エムティーアイの研究チームは、20年近くかけて集まったデータから、「生理周期にばらつきが大きいのは、排卵のタイミングが違うからなのでは?」との仮説を立てた。解析をしたところ、人によって生理周期も排卵のタイミングも違っていることが分かった。
「例えば排卵日予測に関しては、他社のアプリの多くがオギノ式を採用しているのに対して、ルナルナでは、2000年から蓄積してきた利用者のデータを解析し、独自のアルゴリズムを開発。それを利用して予測しています」(那須さん)
オギノ式は、現在は避妊法として認識している人が少なくないが、本来は、昭和初期に産婦人科医の荻野久作氏が不妊治療のために見いだした、排卵日の推定法だ。
現在は避妊法としてのオギノ式は確実性に欠けるとされているが、同社は、定説とされてきた「平均月経周期から予測される次の月経開始日から14日前を排卵日」とするオギノ式予測法の改良に成功し、より高精度で排卵日予測を行うことが可能になったという。正確に排卵日が予測できれば、妊娠する可能性を高めることができるわけだ。
独自に開発したアルゴリズムを採用した、妊娠確率の高い期間が分かる機能は、有料会員のみのサービスだが、排卵日予測のみ可能な無料会員と比較して、生理周期当たりの妊娠率が1.2倍というデータもあるという。
また、2019年には、東京医科歯科大学と国立成育医療研究センターとの共同研究を開始。2016年から2017年にルナルナに登録された約30万人の月経周期(約600万周期)と季節、居住地、年齢などの相関性を調べたところ、日本人女性の月経周期は、季節や居住地による影響をほとんど受けないことが分かった。
一方、年代によって正常月経周期の範囲(25日〜38日)に含まれる女性の割合が変化することが分かった。月経周期の平均値は、25歳頃に最も長くなり、その後45歳までにかけて、約3日間平均値が短くなることが判明したのである。
月経周期を捉える際に年齢を考慮することで、より精度の高いヘルスケアや医療の提供が可能になるかもしれない。
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