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「ルナルナ」20年のデータ蓄積で見えた“オギノ式”の改良点 日本でも広がり始めた「フェムテック」(後編)(3/3 ページ)

» 2021年05月28日 14時30分 公開
[旦木瑞穂ITmedia]
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女性の身体の仕組みを知ってもらうために

 同社は昨年、ルナルナのリリースから20周年を迎え、「FEMCATION(フェムケーション Fem+Education)」という取り組みをスタートした。

 「20年の歩みを振り返ってみると、ルナルナ独自の変化と、女性を取り巻く環境の変化がありました。少しずつではありますが、女性の社会進出が進み、生きやすい社会に変化してきていると思います。しかしまだまだ課題はあります。『全ての女性の幸せの実現に貢献する』というミッションのもと、2000年よりスタートしたルナルナは、20年を経て、女性の幸せを実現するためには、社会に変化を促すことも、重要な要素だということに改めて気づきました」(那須さん)

 そこで同社は、より多くの人に女性の身体の仕組みや、生理による揺らぎなどについて知ってもらうことを目的とした教育プログラムをスタート。

 「私たちは、女性の生きやすさや働きやすさ、幸せを増進するためには、社会に対して女性の身体や不調に対する理解を底上げするべきだと考えました。日本人女性には、どうしても辛さや不調を我慢してしまうという価値観が深く根付いているのではないかと考えています。これを払拭するには、女性の身体の仕組みについての知識を、男女関係なく平等に持つことが肝心だと思います」(那須さん)

 同社では2020年から、一般向けには「Luna Luna EMPOWERMENT LIVE」などのオンラインイベント企画し、ルナルナが培ってきた20年分のデータや知見などをもとに、今後女性が「より暮らしやすく、働きやすく、生きやすく」なるためにはどうすべきかを考える場を提供。一般向けだけでなく、社内・社外研修を企画・開催し、Twitterでの情報発信などを精力的に行っている。

 「社会に変化を促すことは、ルナルナの力だけでは難しいので、賛同していただける組織や企業様と一緒に、“FEMCATION”を盛り上げていけたらと考えています。今や誰もが知っている“妊活”という言葉のように、FEMCATIONが独り歩きして、誰もが知るような身近なものになっていくといいなと思います」(那須さん)

 筆者の時代は、月経教育は小学校4年時に1時間だけ。男女別の教室に集められ、女性の身体の仕組みや月経が起こる理由などについて講習を受けた。講習を受けたからといって、初経が早くに訪れた友人が目の前で困っていても、どうしたらいいか分からず戸惑ったし、男女別にされたことで、後で男子からはからかわれ、トイレに行く際には男子の目が気になって仕方がなかった。

 現在不妊治療している人で、「妊娠の仕組みや年齢が上がるにつれて妊娠しづらくなるということを、もっと早く知りたかった」という人は少なくない。女性の社会進出と晩婚化が進むにつれて、不妊治療を受ける夫婦が増加している。それもこれも、女性のキャリア形成と妊娠・出産・育児の両立が難しいからに他ならない。

 不妊治療には自治体から助成金が出るが、筆者は40歳前後の夫婦に助成金を出すことよりも、月経が始まる前の子どもに性教育を行うことと、若い夫婦が働きながらでも妊娠・出産・育児しやすい社会に変えていくための国民全体の意識改革のほうが先決であり、少子化対策に効果があるのではないかと思う。

photo FEMCATIONのロゴ

日本のフェムテックに期待

 2021年に入り、テレビのゴールデンタイムに、PMS(月経前症候群)が取り上げられ始めた。PMS(月経前症候群)とは、月経開始の3〜10日くらい前から始まる精神的・身体的症状で、月経開始とともに減退・消失する。約7割の女性に何らかの症状があり、そのうち6〜7%は、社会生活に影響が出るほどのつらい症状に悩んでいるという報告がある。

 2025年には5兆円規模に成長することが予想されているフェムテック市場だが、その中の約5分の1を占めるのが、PMS(月経前症候群)や生理に関連するサービスだ。女性の社会進出に伴い、さまざまな調査が行われ、PMSが仕事のパフォーマンスに影響を与えることがわかってきた。

 日本医療政策機構が2016年に実施した「働く女性の健康増進に関する調査結果」によれば、PMSを含む婦人科系疾患を抱えながら働く女性の年間の医療費支出と生産性損失を計算すると、医療費支出が1兆4,200億円、生産性損失が4兆9500億円となり、少なくとも6兆3700億円の経済損失があると分かった。

 そうした課題を解決するために、近年、日本でも月経に関連するフェムテックサービスが次々と誕生している。

 今日本は、女性にとってとても大きな転換期を迎えている。日本のフェムテックに期待したい。

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