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マンガは“無限”の時代へ プラットフォーム最適化の向こう側にたどり着いた“タテ読み”という新標準小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2021年06月07日 16時39分 公開
[小寺信良ITmedia]

「タテの国」の衝撃

 2019年「鬼滅の刃」のヒット以来、マンガ業界は活気づいている。アニメ化、映画化と平行して、コラボ商品も多数登場した。そして次のヒットは、「呪術廻戦」か「極主夫道」か。マンガアプリ「少年ジャンプ+」で電子版からスタートした「怪獣8号」は、紙のコミックス3巻の累計が6月4日に250万部を突破。「少年ジャンプ+」史上最速記録だという。

 「怪獣8号」は最新話の公開1週間で200万ビュー超えを続けており、1話30円で単純計算しても、毎週6000万円を売り上げることになる。たとえ「紙化」しなくても十分な経済規模だ。

 だがこれらのヒット作は、電子コミックスというフォーマットの中では、もう古いのかもしれない。これらは電子版でも、紙の本と同じ手法のコマ割りを使い、横方向にページをめくっていくスタイルだ。

 だが今スマートフォンで読めるマンガの中には、縦スクロールが徐々に増えてきている。これは、コマ割りしたページを縦にめくっていくのではない。ものすごく長い縦方向の巻物に、カットが連なるという表現手法だ。つまり、画面の切り替わりがないのである。

 これに気付いたのは、今度ドラマ化が発表された「ミステリと言う勿れ」に出会った時である。

photo フジテレビでドラマ化される「ミステリと言う勿れ」

 もともとは紙の連載を電子化したものだが、プラットフォームによってスクロール方法が違う。「LINEマンガ」や「まんが王国」では、従来通りのコマ割り紙面を横にめくっていくスタイルだが、「めちゃコミ」での配信は縦スクロールである。

photo めちゃコミ

 コマ割りだとページ面をコマを追いかけながらS字に見ていくことになるが、ただの視線移動なので、セリフ(台詞)があるコマとセリフのないコマの滞在時間が変わる。当然セリフのないコマはチラと見ただけで次のコマへ視線が移る。

 一方縦スクロールだと、各カットに独特の「タメ」ができる。どのコマも均等な速度でスクロールしていくことになるので、無言のコマもそれなりに滞在時間が生じる。これが、作者が想定したリズムというか、間をためるためのコマの役割を具体化させる効果があるように思えたのだ。

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