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“バイトテロ”再び 8年で変質した炎上の背景を考える小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2021年06月23日 13時42分 公開
[小寺信良ITmedia]

 飲食店やコンビニのアルバイトがふざけて不衛生な行為を行い、炎上して店舗に被害を追わせる事件を、俗に“バイトテロ”と呼ぶようになった。ここ最近、ネットニュースやテレビにてバイトテロ事件が数件報道されている。

  • 6月5日:コンビニ店員らが店のバックヤードに設置されたモニターで、レジに並ぶ女性客の胸をのぞく(TikTok)
  • 6月8日:ピザチェーンの店員がシェイクをヘラですくってなめる(Instagram)
  • 6月13日:カレーチェーン店員が休憩室で賄(まかな)いのカツカレーに陰毛らしきものを「スパイス」と称して投入する(Instagram)

 このようなアルバイトが起こす不適切行為が最初に社会問題となったのは、2013年のことである。この件については、当時の連載でもコラムを2本執筆している。

 同じような事件が再び頻発し始めたように見えるが、8年前とはいろいろ事情が変わってきている。新しい知見も加えつつ、こうした炎上事件の背景にあるものを考えていく。

8年で変質した「炎上」

 まず8年前と昨今の違いとしては、不適切な行動の証拠として出回るものが、写真から動画に変わったことが大きい。多くの青少年は、悪ふざけの証拠として、写真よりも動画を気軽に撮影・投稿するようになっている。また、動画を扱えるメディアも多様化している。

 炎上におけるプロセスも、変わってきている。8年前は、問題の写真がTwitter上に投稿され、同じTwitterで数万人規模の人が話題に飛びつき、リツイートなどのアクションを行っていた。そこから旧2ちゃんねるなどの匿名掲示板でスレッドが立ち、本人特定や電凸などのアクションは匿名掲示板上で行われていた。テレビや新聞メディアは後追いで、一連の事件を社会問題という形で報じていた。

 今回のバイトテロ事件のうち、カレーチェーンの話題を追いかけてみると、投稿された動画はもともとInstagramの鍵付きアカウントで、24時間で消える「ストーリー」に投稿されていた。その動画がTwitterに転載されたのが、6月13日午前1時半ごろである。いわゆる「通報」の格好だが、通報先は炎上案件を扱う人気YouTuber宛となっている。彼に取り上げてほしい、ということであろう。

 これを最初にニュースとして報じたのは、6月14日午後4時10分のJ-CASTニュースではないかと思われる。

 一方Twitterでの動きをYahoo! リアルタイム検索で追ってみると、やはり14日午後から急激に言及が増えている。ただ、リツイートされているのは同日16時51分にJ-CASTより転載されたニコニコニュースの記事のようだ。ユーザー同士の口コミで広がるのではなく、ニュース記事となったものが循環する格好である。8年間でTwitterの温度が随分下がったのを感じる。

 言及数としては、炎上期間の範囲で絞ると8500件弱と、炎上事件としては意外に少ない。いやどれぐらい言及されれば炎上なのかの基準は持ち合わせていないのだが、かつての炎上事件が万単位であったのに比べると、少なくとも「ネットで大炎上」とはいえないのではないかという気がする。この事件が「炎上」というのは、実数と関係なくレッテルが貼られただけという可能性も指摘しておきたい。

photo 炎上数としては、少なくないか?

 いわゆる「タレコミ」された側の人気YouTuberは、6月15日のライブ配信でこの話題を取り上げているが、動画タイトルに炎上事件の項目は入っておらず、内容の部分に「バイトテロ動画紹介」と記載されているにとどまる。

 一方テレビの動きは早かった。6月15日のTBS朝の情報番組「あさチャン!」で午前6時35分ごろに単体のニュースとして報じられているようだ。また同日午後のフジテレビ「バイキングMORE」でも取り上げられている。報じる理由も、炎上しているかどうかはあまり関係なく、不適切な行為をしていることを問題視している。

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