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USBが誕生したのは「奥さんのプリンタをつなげる手間にキレたから」 USBの設計当時を振り返る“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(4/6 ページ)

» 2021年06月23日 16時42分 公開
[大原雄介ITmedia]

 ハードウェア的な観点でいえば、Intelがチップセット内にUSBのコントローラーを実装して提供していたから、マザーボードメーカーはUSBコネクターをチップセットにつなぐだけで、あとは周辺機器メーカー任せという話で実装の難易度は低かった。

 1996年2月にIntelは430VX(Triton VX)および430HX(Triton II)とあわせて、APICとUSB 1.1をサポートしたPIIX3(82371SB)をリリースする(写真2)。

photo 写真2:1995年にリリースされたPIIX(82371FB)と基本的には同じだが、図の下側の濃い部分(USBとAPIC)がPIIX3で追加された。出典はIntelの"82371FB (PIIX) AND 82371SB (PIIX3) PCI ISA IDE XCELERATOR"というデータシート

 1998年3月にリリースしたSpecification UpdateではErrataが15個(うち14個がUSB関連)で、しかもPIIX3のRevision Upで解消されるのはそのうち7つだけ(写真3)といった具合に、製品クオリティーに達しているとは言いがたいレベルだった。

photo 写真3:Intelの"Intel 82371FB (PIIX) and 82371SB (PIIX3) PCI ISA IDE Xcelerator Specification Update March 1998"からの抜粋

 これをサポートするソフトウェアの方も大変だった。

 USBを最初にサポートしたOSはWindows 95のOSR(OEM Service Release) 2であった(公式にはOSR 2.1以降)が、確かOSR 2の段階だと「UHCIは試したけどOHCIはテストしてない(当時OHCIのコントローラーの実物がないため、テストできなかった)」とかドキュメントに書いてあった始末で、実際OHCIだとうまく動かなかったりした。OSR 2.1で多少改善した記憶はある。

 どういうことかというと、IntelはUSBのコントローラーをUHCI(Universal Host Controller Interface)という名称で提供したが、なぜか当初このUHCIのAPIとかを一切公開しなかった(その後、EHCIを公開した後で公開している)のである。それもあって、UHCIのライセンスを受けたVIA Technologies以外の互換チップセットベンダーはUSBのコントローラーを実装できなかった。

 この対抗策としてOHCI(Open Host Controller Interface)という規格がCompaq、Microsoft、National Semiconductorの3社により策定された。ただこれは当然Microsoftを始めとするソフトウェアベンダーにとっては面倒以外の何物でもなかった。

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