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「なぜスマホのバッテリーは交換できないの?」 その理由と問題の本質を考える(3/4 ページ)

» 2021年07月08日 07時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

「他社製バッテリー」での事故を怖がるメーカー

 容量の他に、メーカーがバッテリー交換式を嫌がるようになった理由がある。

 それが安全性だ。交換式だから安全でない、という話ではない。「社外で製造された粗悪なバッテリーが引き起こす問題」が懸念されるからだ。

 バッテリーが膨らんだり、火が出たりして事故につながったという例は少なくない。そしてその一部は、粗悪なバッテリーから発生している。安価な社外品バッテリーの中には、製造時の検品や輸送時の管理の問題から、ショートなどの問題を起こしやすいものがある。バッテリーが大容量化したこともあって、焼損事故も深刻なものとなりやすい。

 メーカー側としては、できるだけ自社製のバッテリーを使ってほしいと考えている。製造工程や組み合わせた時の状況をちゃんと把握できるからだ。だが、交換式だと「非純正バッテリー」を排除するのは難しい。全てがちゃんとしているなら問題はないが、実際にはそうではない。

 バッテリー交換式だったフィーチャーフォンの時代には、社外品のバッテリーを使ったことによる焼損事故がいくつかあった。今、そうした事故は、電動工具や掃除機などで深刻化している。モバイルバッテリーでもリコールや事故の話は多い。

 スマホのバッテリーが交換式になれば、電動工具や掃除機、モバイルバッテリーで起きていることと同じ問題が発生するのは間違いない。

 そんなこともあって、今のメーカーはスマホを「バッテリー交換式にすること」に及び腰、という側面もあるのだ。

「満充電じゃないと怖い」常識を捨てよう

 ではこのままでいいのだろうか?

 問題にはいくつもの側面があるが、筆者は2つのポイントに注目する必要があると思っている。

 1つ目は「充電の仕方に問題があるのではないか」ということだ。

 バッテリーが減っていると不安になり、できるだけ100%充電されている状態を維持したくなる……という人は意外と多い。自宅やオフィスなどでスマホを使う際、電源をつないで「充電状態のままずっと使う」人も多いだろう。

 バッテリーが劣化して本体修理を余儀なくされる理由はここにある。

 今のバッテリーは「高熱にさらされる」「満充電に近い状態を長く維持する」ことで劣化しやすい。適度に使って適度に充電するのが最も効率的なのだ。

 しかし、「いつでも100%じゃないと怖い」と思いながら使っていると、バッテリーは設計よりも早く劣化する。本来、1年の使用で使い物にならないくらい充電容量が減ることは考えづらく、そういう場合はまさに「故障」か「充電頻度が適切でないか」のどちらかと考えられる。

 現在のスマホやPCの場合には、かなり十分なバッテリーが搭載されているので、あえて充電を8割もしくは9割程度で止める機能を搭載し、バッテリーの劣化を抑えるようになってきた。iPhoneなら「バッテリー充電の最適化」という機能がそれだ。Androidにも「いたわり充電」などの名前で、同様の機能が搭載されている。こうした機能は積極的に使った方がいい。

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photo iPhone(上)とAndroid(Xperia 1 II)のバッテリーに関する表示。満充電にしない「いたわり充電」系の機能は標準搭載になってきた

 もちろん、われわれの側にある「満充電でないと不安」という心理をなくしていくことは重要だろう。充電速度も、100%までの充電には時間がかかるものの、85%や90%までなら短時間で充電が終わるようになっている。いつもモバイルバッテリーをつないで持ち歩くようなことはやめて、「ちょこちょこと急速充電」という使い方の方が良い。

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