ITmedia NEWS >

Modern PCの礎、PCIはどう生まれ、いかに成立していったか“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(4/5 ページ)

» 2021年07月30日 10時30分 公開
[大原雄介ITmedia]

 最終的にPCI SIGは1992年に設立され、すぐさまPCI Local Bus Specification Revision 1.0がリリース、さらにCompliance Programがスタートしている。もっともCompliance Programといってもまだテスト仕様書もなければ測定器も不十分、というところからのスタートで、こちらもいろいろ苦労したらしい。

 翌1993年には、デスクトップPC向けにMercuryことIntel 82430LXがリリースされ、その翌年の1994年にはMercuryをベースにしながらサーバ向けにDual CPUをサポートしたNeptuneことIntel 82430NXもリリースされる。ただ、少なからぬ拡張ボードメーカーにとっては、Intel 82430LXを搭載したマザーボードが事実上の開発プラットフォームになったということになり、マーケットが本格的にPCIに移行し始めるのは1995年、Neputuneの後継としてPCI Revision 2.1準拠でBus Master機能を追加したTritonことIntel 430TXが登場してからになる。

 実をいうと、Mercury/NeptuneではPCIでDMA Bus Masterの機能が実装されておらず、そのために拡張カードは事実上PIOで通信することになっており、性能が全然上がらなかった。Specification自体にも抜けや間違いが多く、Specificationの解釈に誤解を招くような部分も少なくなかった。それもあってSpecification自身も1993年4月にRevision 2.0が、1995年5月にはRevision 2.1がリリースされ、それとは別にECR/ECN(Engineering Change Request/Notice:要するに技術的な変更依頼と変更通知)がてんこ盛りに出ていた。そうした状況もあってか、InfoWorldの1994年10月3日号では基本的には前向きなながら、いろいろと皮肉を込めた記事(写真2)が掲載されていた。

photo 写真2:タイトルは「IntelのPCI busは、メリットがデメリットを上回っている」

 ついでにいうと、Tritonが出た際にもひと騒動あった。PCIでは、システムの立ち上げ時にカードの初期化を行う(まぁPCIでなくてもここは同じだが)。この際に、Neptuneでは32bitのPIOの形でカードとの通信を行って初期化を行っていた。これがTritonではこの初期化時の通信方式が1 Byte DMAに切り替わった。ところが拡張カードはNeptuneやらこの当時登場したSiSのPCI対応チップセットを使ってテストしていたから、そんな機能は当然持っておらず、「SiSのマザーボードでは動くのにTritonでは動かない」という状況に陥り、理由が判明して拡張カードメーカーが悲鳴を上げた、というケースを複数聞いたことがある。まあ過渡期ならでは、の出来事ではある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.