こうした従業員管理の高度化が進む一方で、個々の従業員に対して、彼らが望む仕事環境を提供する取り組みに遅れがあるとの指摘がある。
コンサルティングファームの米Boston Consulting Group(BCG)が2021年6月に発表したレポート「Creating People Advantage 2021」では、世界113カ国6600人の対象者に対してアンケートを行い、いま人事領域において注目されている課題を探っている。
この中で、「従業員のニーズと期待に焦点を当てることが、人材獲得競争における重要な成功要因である」という設問に対し、回答者の85%がYESと答えている。これは同レポートの中で最も高い同意率であり、BCGは「従業員を中心としたアプローチの重要性を裏付ける結果」と解釈している。
しかし重要性は認識されつつも、この成功要因が具現化されているとは言い難い状況のようだ。BCGは同レポートにおいて、デジタル、AI、その他関連分野に関する能力が低いため、多くの組織がパーソナライズされた体験を従業員に提供できていないと指摘し、その証拠として、「自社に導入されているデジタルツールは、シームレスでパーソナライズされた体験を提供し、日常業務を容易にしている」という設問に対し、回答者(人事部に所属する人以外)の33%しか合意していないことを挙げている。
従業員ケアの全てがデジタルツールを通じて行われるわけではないが、出社して働く人、在宅で働く人、それらを組み合わせてフレキシブルに働く人などさまざまな仕事の在り方が混在し得るウィズコロナ時代には、従業員対応の自動化やカスタマイズが容易なデジタルツールを整備することが欠かせない。それが十分に達成されていると感じている従業員が、全体の半数にも満たないという状況は、急いで改善されなければならないだろう。
好むと好まざるとにかかわらず、皆が同じオフィスに出社し、同じ空間で働くことが当たり前の世界は、当面戻って来そうにない。そしてデルタ株など新たな変異株の発生によって、その「当面」の期間は引き延ばされる一方だ。その中で、従業員の視点から働きやすい環境を実現していくことが、企業には求められている。
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